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アジャイル開発でレビューが機能しないのはなぜか?ユーザー価値を起点とした効果的なレビューの進め方

アジャイル開発でレビューが機能しないのはなぜか?ユーザー価値を起点とした効果的なレビューの進め方

変化に柔軟に対応でき、ビジネス価値の創出に適した開発手法として近年多くの企業が取り入れているアジャイル開発。一方で、少人数・短期間での開発では、レビューの時間が不足し、品質上の問題が生じるケースも少なくありません。

スプリントゴールを着実に達成するためには、限られたリソースのなかで「何を優先してレビューをするか」を明確にし、必要なレビューをスムーズかつ抜け漏れなく行える体制づくりが不可欠です。

本記事では、アジャイル開発に適したレビューの進め方やチームづくりについて、具体例を交えながら解説します。

アジャイル開発のレビューで生じる問題

短期間・少人数で開発が進むアジャイル開発には、「限られた時間の中で、どこまで品質を確保できるか」といった、従来のウォーターフォール開発とは異なる難しさがあります。

まずは、チーム内でのレビューに関して多くの現場が経験する問題を紹介します。

アジャイル開発のレビューで生じる問題

レビューに使える時間が足りない

アジャイル開発では、設計・開発・テストを1〜4週間の短いスプリントに区切って進めるため、レビューに充てられる時間が限られています。そのうえ、仕様変更や計画の見直しが頻繁に発生するため、「どこまでレビューするか」「どこを次のスプリントに持ち越すか」の判断が常に求められます。

こうした特性から、スプリントゴールとそれに基づく優先順位が曖昧なまま進めてしまうと、必要なレビューの漏れにつながる恐れもあります。

専門人材の不足により、品質保証の視点が欠ける

少人数で進めることの多いアジャイル開発では、チームに専任のQAエンジニアがいない、もしくはリソースが限られているケースが少なくありません。

アジャイルでは、開発・設計・テストといった役割の垣根を越えて、各メンバーが自律的に品質を意識して動くことが求められます。しかし、リソースや知識の不足から、品質の確認が不十分になる現場が多いのが実情です。

効果的なレビュー体制を構築するための3つのポイント

限られた時間のなかで品質を担保するには、レビューの優先順位を明確にし、効率的な体制を構築することが重要です。

ここでは、アジャイル開発でレビューを機能させるための3つのポイントを解説します。

効果的なレビュー体制を構築するための3つのポイント

ユーザー価値を基準とした優先順位の明確化

アジャイル開発では、クライアントの要望や市場の変化に応じて計画が頻繁に見直されます。そのため、チーム全体で優先順位の判断軸をあらかじめ共有しておくことが重要です。

特に重要なのが、「このプロダクトはユーザーにとって何の役に立つのか」というユーザー価値の視点です。この視点があれば、単なる仕様変更に振り回されるのではなく、チームとして筋の通った判断ができます。

例えば、以下のようなケースでは、ユーザー価値が優先順位決定の軸になります。

【ユーザー価値の例】

コールセンター用のCTIシステムの場合
電話とPCがつながり、顧客情報がスムーズに連携できれば、オペレーターはより多くの顧客に対応でき、結果として会社の業績向上につながる

会計ソフトの場合
経費精算の申請から承認まで1日以内に完了すれば、従業員は立替金を早く回収でき、経理担当者も月末の業務集中を避けられ、社員の働きやすさにつながる

このように、ユーザーがそのプロダクトを使ってどんな目的を達成したいのか(特にBtoB開発なら、どのようなビジネス成果につなげたいのか)を考えることで、場当たり的な判断を避けながら、要求や仕様の変更に対応できます。

重要な観点に絞ったコードレビューの実施

ウォーターフォール開発のコードレビューでは、コードの可読性・保守性、パフォーマンスの観点なども含めて詳細にレビューすることが一般的です。アジャイル開発でもこれらの観点は重要ですが、スプリント内で実装からテストまで完了させるために、要点を絞ってレビューを進める必要があります。

スプリントゴールの達成に向けて、最優先すべきレビュー観点は以下の3つです。

①新機能が正しく動作するか

②新機能に関連する機能が正しく動作するか

③既存機能と競合する部分がないか

例えば、コールセンター用のCTIシステムでは次のような観点が考えられます。

  • 新機能
    • 海外との通話が問題なく行えるか
  • 関連機能
    • 通話内容がCRMに正しく連携されるか
    • 一定数のコールで応答しなかったときに自動音声が流れるか
  • 既存機能との競合
    • 既存のコードに、海外からの着信を拒否する処理が実装されていないか

これらの観点を中心に、使用頻度の高いパスや不具合発生時のリスクが大きい箇所を重点的にレビューすることで、限られた時間で目標達成につなげられます。

ペアプログラミング・モブプログラミングの導入

ペアプログラミングやモブプログラミングは、複数人が協力してコードを書く開発手法です。ペアは2人で、モブは3人以上で行い、どちらも以下の2つの役割を定期的に交代しながら進めます。

  • ドライバー 実際にコードを書く
  • ナビゲーター ドライバーの操作を見守りながら、リアルタイムでフィードバックする

実装した本人はミスに気づきづらいところ、ペアプログラミングやモブプログラミングでは常に複数の視点を入れながら実装を進めることで、実装本人が気付きにくいミスや抜け漏れを回避しやすくなります。

また、役割を交代しながら進めることでメンバー全員がシステムへの理解を深められるほか、実装中にリアルタイムで気づきを共有できるため、後工程でのレビュー時間を短縮できる効果もあります。

アジャイル開発で品質を継続的に安定させるための取り組み

限られた時間のなかで品質を担保するには、「目的」と「優先順位」をチーム全体で共有し続けることが重要です。

最後に、アジャイル開発で品質目標に対する認識を共有するためのコミュニケーション・情報共有の方法を解説します。

アジャイル開発で品質を継続的に安定させるための取り組み

デイリースクラム

デイリースクラムは、毎日行う短時間のミーティングです。各メンバーが「前日の進捗や気づき」「その日の作業予定」「作業を進めるうえで困っていること」などを共有し、必要に応じて計画を調整します。

【報告の例】
「昨日はログイン機能のバックエンド実装を進めた。今日はフロントエンドとの連携に取り組む予定。ただ、セッション管理の仕様がまだ明確でなく、このまま進めると手戻りが発生する恐れがある」

「昨日は外部APIとの連携テストを予定していたが、先方の環境トラブルでテスト環境にアクセスできなかった。今日も状況が変わらなければ、別のタスクに切り替えるべきか相談したい」

デイリースクラムは、進捗の確認だけでなく気づきや問題点をその場で共有できるため、手戻りや認識のズレを最小限に抑える効果が期待できます。また、ポジションにかかわらず率直に話し合える空気をつくれれば、情報共有を円滑に進め、開発効率向上にもつなげられます。

レトロスペクティブ

レトロスペクティブは、スプリントの最後に行う振り返りのミーティングです。ステークホルダーへの成果報告(スプリントレビュー)の後に実施し、開発プロセスやチームの動きについて「何が良かったか」「何を改善すべきか」を整理します。

よく使われるのが「KPT(Keep/Problem/Try)」というフレームワークで、継続すべきこと、課題、次に試す改善策を明確にします。

【KPTを用いたレトロスペクティブの例】

  • Keep(継続すべき点)
    • デイリースクラムを10分に短縮したことで、集中力が保てた
    • ペアプログラミングを導入し、新メンバーのオンボーディングがスムーズになった
  • Problem(改善点)→Try(次に試す改善策)
    • コードレビューの待ち時間が長く、開発が滞った
      →レビュー担当をローテーション制にする
    • タスクの粒度が大きすぎて、進捗が見えにくかった
      →タスクを半日単位に細分化する

抽象的な議論で終わらせず、実行可能な改善策を提案し合うことで、チームの作業プロセスを継続的に改善できます。

レビューナレッジの蓄積

アジャイル開発ではスピードが重視されるため、レビュー結果の記録やドキュメント化が後回しになりがちです。しかし、スプリントの終了時などに、よくある不具合や指摘事項を整理しておくことで、チームの品質保証力を高めることができます。

例えば、似た機能で毎回同じような指摘が出る場合は、それらを記録してチーム内で共有することで、スクラムメンバーが入れ替わっても、改善点を引き継いで開発効率を継続的に高められます。

経験が属人化しがちなアジャイル開発において、ナレッジの見える化は特に重要です。

ユーザー価値を起点に、要点を絞ったレビューを進める

アジャイル開発でレビューを成功させるカギは、ユーザー目線で品質要件の優先順位を明確にしたうえで、チーム内で共通認識を形成することです。技術的な完成度や計画への適合性を過度に追い求めるのではなく、「ユーザーにとって何が価値あるか」を軸に判断することで、限られた時間のなかで最大の効果を生み出せます。

品質要件の定式化や優先順位づけには、品質基準に関する一定の経験やスキルが求められます。チーム内にQAエンジニアがいない場合やリソースが不足している場合は、外部の支援会社との協業も有効な選択肢の1つです。専門的な観点から支援を受けることで、社内に品質保証のナレッジを蓄積し、長期的に見て品質に強いチーム形成につなげられます。

AGESTでは、アジャイル開発に適した品質保証体制の構築支援を行っています。レビュー体制の設計から実施支援まで、お客様の状況に合わせたサポートを提供いたします。

自社の品質保証体制に不安のある方は、ぜひ一度ご相談ください。

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