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セキュリティ

サイバー攻撃に“先手”を打つ。2026年からSBOMを導入する意義とこれからのセキュリティ対策

サイバー攻撃に“先手”を打つ。2026年からSBOMを導入する意義とこれからのセキュリティ対策

サプライチェーン攻撃のニュースを耳にするたび「自社のプロダクトは大丈夫なのだろうか」と不安を感じつつも、調査に乗り出せていない企業は多いのではないでしょうか。

いつ現れるかわからない重大なリスクへの対抗策として近年注目されているのが、ソフトウェアの部品表であるSBOM(Software Bill of Materials)の活用です。

リアルタイムで脆弱性を把握できるSBOMの導入は、AI駆動開発の普及によりシステムの内部構造の不透明さが増していく2026年、以前にも増して意義の大きい施策となっています。

本記事では、SBOMが注目されている理由や導入の必要性、早期の導入が企業の競争力にもたらす意義について解説します。

なぜ今SBOMが注目されているのか

サプライチェーンリスクへの対応策として広く話題に上るようになったSBOM。まずはその基本的な定義と、従来の脆弱性管理と比較した際の優位性について解説します。

SBOMとは | ソフトウェアの成分表

SBOMとは、ソフトウェアに含まれるコンポーネントやその依存関係、ライセンス情報などをリスト化した、いわば「成分表」(部品表)のようなものです。

また、SBOMを食品の原材料ラベルにたとえると、よりその役割を想像しやすくなります。ラベルを見ることでアレルギー物質などのリスクを判断できるように、SBOMではソフトウェアの内部構造を可視化しておくことで、どの部品にどのようなリスクが潜んでいるかを即座に把握できます。

SBOMとは | ソフトウェアの成分表

従来の脆弱性管理との違い | リアクティブからプロアクティブへ

SBOMが従来のセキュリティ対策と決定的に異なるのは、「リアクティブ」(攻撃されてから反応する)から「プロアクティブ」(攻撃を予見して先に対応する)への転換が実現できる点です。

従来の脆弱性対策の体制では、システムが攻撃を受けるまでどこにリスクがあるかわからないことも少なくなく、ログの振り返りからどのコンポーネントが問題だったかを特定するまでに数日から数週間を要するケースもありました。

一方でSBOMを導入すれば、新しく脆弱性が発見された際の影響範囲の特定と初動判断を大幅に速めることができ、攻撃を未然に防げる可能性が格段に上がります。

2025年に発見され大規模な影響を及ぼした「React2Shell」(CVE-2025-55182)のような深刻なサプライチェーンリスクは増加の一途を辿っています。こうした脅威に対し、常に最新の「部品表」を持ち、迅速に動ける体制を整えることの重要性は、かつてないほど高まっています。

2026年にSBOMを導入する意義

2026年現在、国内においてSBOMの導入はまだ全面的に義務されているわけではありません 。

しかし、開発環境の劇的な変化やグローバルな規制の動向を考慮すると、今このタイミングで導入に踏み切ることには、中長期的な信頼性と競争力の面で大きな意義があるといえます。

AI駆動開発で増加する「見えないリスク」への対策

Claude CodeなどのAIコーディングツールの発展により、自然言語でAIにコーディングを指示する「バイブコーディング」の手法が普及しました。

プロンプトを打ち込むだけでソフトウェアが動く世界では、AIが必要と判断したコンポーネントを自動でインストールしていきます。このようにAI駆動開発が進むほど、今後は開発プロジェクトに参画する人員のなかでも「中にどのコンポーネントが使われているか」への意識が薄れていくでしょう。

ここで注意しなければならないのは、「AIが書いたから中身は知らない」という姿勢は通用しないという点です。AIを使って開発したとしても、プロダクトの脆弱性に起因するユーザーや社会への影響については、開発元が責任を取る必要があります。

AIが急速にコードを書き換え、コンポーネントを更新していく環境下で安全性を担保するには、常にシステムの中身を把握し続ける仕組みが不可欠です。SBOMを導入し、継続的に更新・監視できる環境を整えることで、AI駆動の開発においてもリアルタイムでリスクを可視化し、脆弱性検知後の迅速な対応が可能になります。

義務化前の今こそ、企業の差別化につながる

諸外国では、2027年12月に全面適用されるEUサイバーレジリエンス法(CRA)などに象徴されるように、SBOMの作成・継続的な管理は当然の法的義務となりつつあります。

一方で、日本ではまだSBOMの活用が義務化まではされていないため、いち早く取り組んでいる企業は、市場から「セキュリティに対して先進的で誠実な企業」という高い評価を受けることが期待できます。

サイバー攻撃を受けた企業に対する評価は、攻撃された事実そのものよりも、攻撃される前にどれだけ準備していたかによって大きく左右されます。万が一サイバー攻撃を受けたとしても、「SBOMを用いて脆弱性をリアルタイムで把握し、リスクについては随時対応していた」という事実を提示できれば、ブランドへのダメージを最小限に抑え、顧客や取引先からの信頼を維持できるはずです。

度重なるサイバー攻撃の報道で市場全体の危機意識も高まるなか、国内標準レベル以上のセキュリティ対策を実施しているという事実は、強力な信頼の証となります。また、SBOM導入に伴う学習や環境整備のハードルを今のうちに乗り越えておくことで、やがてSBOM導入が標準化したときのノウハウ蓄積にもつながるでしょう。

SBOMを「形」だけで終わらせないために必要なこと

専用ツールを用いてSBOMを管理すれば、システムの全体像を可視化し、リアルタイムで脆弱性を検知できるようになります。

しかし、SBOMを導入しただけで満足し、運用が形骸化してしまっては意味がありません。有事の際に適切な対応を行い、顧客の信頼を守るためには、事前の体制構築とビジネス視点での臨機応変な判断が欠かせないのです。

ここからは、実際にSBOMを利用してどのようにサイバー攻撃に対応していくかのヒントを解説します。

前提:作成から運用までの「3つのフェーズ」を整える

まずはSBOMを作成し、専用の管理ツールを用いて脆弱性と照合できる仕組みを整える必要があります。

経済産業省の手引きでは「環境構築・体制整備」「作成・共有」「運用・管理」の3つのフェーズが定められており、これらのフェーズを順に進めることで、脆弱性情報の把握や対応判断を迅速に進められる状態が実現します。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

セキュリティ運用ポリシーで行動フローを可視化する

SBOMで脆弱性を検知できても、「誰が・いつまでに・何を判断するか」が決まっていないと対応は後手に回ります。これを防ぐのが、「セキュリティ運用ポリシー」の策定です。

クリティカルな脆弱性が発見されたとき、会社としてどう判断するかを事前に決めているかどうかが分岐点になります。

重大な脆弱性のニュースに伴い原因調査を求められた場合、セキュリティ運用ポリシーを持つ企業とそうでない企業では、次のように大きく対応の差が出ます。

セキュリティ運用ポリシーで行動フローを可視化する

セキュリティ運用ポリシーがある場合
「脆弱性の検知から○時間以内に経営判断を行う」「顧客データへの影響がない場合はサービスを継続し、○日以内に修正する……」などのように手順通りに進められる。顧客やユーザーを含むステークホルダーにもすぐに対応方針を説明できる

セキュリティ運用ポリシーがない場合
「だれが」「いつまでに」「何を」対応するかがわからず、SBOMですぐに脆弱性を検知できたとしても、対応が後手に回る

たとえ攻撃を受けたとしても、未然に整えるべきセキュリティ運用ポリシー通りに見通しを立てて行動していれば、むしろ「有事の際に備えられている」として顧客や市場からの信頼感につながります。

セキュリティ運用ポリシーを対外的に公開しておくことが理想的ではありますが、社内で定めておくだけでも、システムの安全と顧客からの信頼を守る大きな一歩となります。

「ビジネスへの影響」を考慮したトリアージを行う

SBOMで実際に脆弱性が発覚した場合には、CVSS(脆弱性がどれだけ深刻かを表す指標)やEPSS(実際に悪用される可能性を示す指標)といった指標をもとに対応を考えていく必要がありますが、これらの標準的な指標をもとに判断するだけでは不十分です。

実務では、「該当するコンポーネントがシステムのなかでどのような役割を担っているか」を整理し、「そのコンポーネントを入れ替えることによって、システムの挙動や顧客の利用状況にどのような影響が出るのか」を考慮したうえで対応策を決めることが求められます。

法人・個人問わず、顧客はサービスを継続的に利用できることを期待して契約するはずです。脆弱性が見つかったからといってサービスの運用を止めれば、顧客に不便を強いることになります。いかにして顧客への影響を抑えながら対応を進めるか、セキュリティ部門だけでなくビジネス部門や経営層も巻き込みながら、総合的に判断していく必要があります。

セキュリティ対策におけるAIの限界に留意する

AI駆動開発の普及により、脆弱性対応における方針の策定においてもAIにサジェストを求めることができるようになりました。

しかし、AIは自社のビジネスの文脈を完全には理解できない以上、その修正が既存の動作に対してどんな影響を及ぼすかは不透明です。極端に言えば、「AIのいう通りにコンポーネントをリプレースした結果、脆弱性はなくなったが、サービスの基本的な機能が動かなくなってしまった」といった問題を引き起こす恐れもあります。

システムがはらむリスクを把握し、自社の事業戦略と照らし合わせてどのように対応するかの意思決定については、これからも企業が責任を負うことに変わりはないのです。

早期のSBOM導入で、将来の競争力を担保する

SBOMを用いた脆弱性対策は、遠くないうちに日本でもセキュリティ対策の標準となることが見込まれます。まだ国内で本格的な普及が始まる前の現段階から導入を進めておくことで、安全性を担保しながらAI駆動などの先進的な開発手法を推進しつつ、顧客や市場からの信頼性の面でも一歩リードできるはずです。

初めてSBOMを作成した現場では、いかに自社のプロダクトについて知らないことが多かったかを実感するでしょう。場合によっては、サポート切れ(EOL/EOS)を迎えたコンポーネントが大量に含まれていることが発覚し、不安に駆られるかもしれません。それでも、まずは現状を把握することが、顧客の安全や企業の信頼性を守る第一歩となります。

AGESTの「SBOM Archi」は、SBOMの生成および検出された脆弱性の定期的な評価と改善をサポートします。リスク予測を含めた多次元評価や、改善効果をシミュレーションするレコメンドなどの多面的な機能に加え、経験豊富なエンジニアによるサポート体制も充実。初めてSBOMを導入するチームにも安心して使用いただけるツールとなっています。

SBOMの導入や運用に課題を持つ企業は、ぜひ一度AGESTにご相談ください。

[→ SBOM Archiの詳細・お問い合わせはこちら]

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