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AI駆動開発の落とし穴。「動くのに使えない」を防ぐ妥当性確認(Validation)の視点
ClaudeCodeやCodexといったAIをコーディングに活用し、開発スピードを飛躍的に向上させる現場が増えています。一方で、「動きはするが、欲しかったものと違う」「ユーザー目線で価値のある機能に仕上がっていない」といった、AI特有の品質問題に直面しているチームも多いのではないでしょうか。
AIは与えられた指示通りにコーディングすることには長けています。しかし、ユーザーにとって価値のあるプロダクトを届けるには、AIの性質と限界をふまえ、人間が担うべき品質保証上の役割を整理しておく必要があります。その軸となるのが、仕様通りに動くかの検証である「動作検証」と、ユーザーにとって価値のあるシステムになっているかを評価する「妥当性確認」の区別です。
本記事では、AI駆動開発で起きやすい問題を「妥当性確認」の視点から整理し、AI時代に考えたい品質保証のあり方について解説します。
目次
正しくコーディングできるはずのAIが「使えない」プログラムを量産する
AIは指示した通りのコードを正確に、かつ高速に書き上げますが、出来上がった成果物を確認すると「動作はするが、求めていたものと何か違う」という問題が生じることが少なくありません。
例えば、入力フォームの追加を指示したところ、フォーム自体は仕様通りに動くのに、現場の入力手順とはかけ離れた並びになっていて、そのままでは使えない。あるいは、売上データのCSV出力機能を指示したところ、指示した通りに出力はされるものの、処理に30分もかかってしまい、実際の運用に耐えられないといったケースです。
こうしたトラブルに直面し、「結局は一から作り直すことになった」という経験のあるエンジニアは多いのではないでしょうか。実際に、AIによってコーディングそのもののスピードは飛躍的に向上した一方で、品質問題による手戻りのために期待したほどの効率化が進まない、と悩む現場は多いのが実情です。
AIの限界を紐解くための、「動作検証」と「妥当性確認」の視点
さて、先に挙げたような問題はなぜ起きるのでしょうか。そして、AI駆動開発のスピードを活かしつつ「使える」プロダクトを作るためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
ここでは、品質保証プロセスの大きな軸である「動作検証」「妥当性確認」の観点から整理します。
動作検証(Verification)と妥当性確認(Validation)の違い
「動作検証」と「妥当性確認」はどちらも品質保証のプロセスを指しますが、次のように意味が異なります。
動作検証(Verification)
「仕様通りに正しく動くか」を確かめること
例)「登録されたIDとパスワードを入力すればログインでき、間違えればエラーになる」といった挙動が仕様通りかどうか
妥当性確認(Validation)
「ユーザーにとって価値があるか」を確かめること
例)買い物を最後までストレスなく完了できるか
例えば、飲食店の検索サイトで、検索機能を仕様通り実装できた場合、「動作検証」の観点からは問題ないといえます。しかし「該当の店舗が閉店しているかどうかが、ネット予約画面の直前までわからない」といった「妥当性確認」上の問題があれば、ユーザーはストレスを感じてサービスから離脱してしまうかもしれません。
AIがコーディングの正確性では人間をはるかに上回るため、「動作検証」観点での品質は担保しやすくなりました。一方で、「ユーザーにとっての価値」は人間にしか判断できないからこそ、後者の妥当性確認の重要性が増しているのです。

ビジネス文脈を理解して価値を判断するのは人間の役割
妥当性をAIが判断できない最大の理由は、AIがビジネスの文脈(コンテキスト)を理解しないまま成果物を作り上げてしまう点にあります。
ここでいうコンテキストとは、「そのシステムがどのような事業で、誰に、どんな目的のために使われるのか」という背景のことです。
例えば金融システムであれば、金融業界ならではのドメイン知識や、扱う数字の意味合いといった前提が存在します。人間の開発者は、多かれ少なかれこうした背景を暗黙のうちに汲み取って実装に取り組みます。しかし、AIはその文脈を知らないまま指示通りに処理するため、「動作はするが、ユーザーに喜ばれない」プログラムが作られてしまうのです。
コンテキストの理解はAIが原理的になしえない領域だからこそ、成果物が「人間(ユーザーやクライアント)にとって価値があるのか」という評価は、今後AIの性能が上がったとしても変わらず人間の仕事であり続けます。
妥当性を担保する「インプット」と「アウトプット」の品質
それでは、AIには判断できない妥当性をどのように担保すればよいのでしょうか。
ここでは、「AIにインプットさせる情報の質」と「AIのアウトプットを評価する視点」の両軸から解説します。
インプット品質 | AIに適切な情報を渡す
AIは指示通りのコーディングに長けているからこそ、与える情報の精度を高めるほど、意図に沿った成果物を得やすくなります。
【インプットの質を判断する3つの観点】
要件・要求が正しいか
作り手が「必要だ」と考えた機能が、本当にユーザーの課題を解決するものになっているか
矛盾や曖昧さがないか
誰が読んでも同じ意味に受け取れる記述になっているか。解釈が分かれる曖昧な表現や、要件同士で食い違う記述が残っていないか
AIにとって理解しやすいか
人間が暗黙のうちに補ってしまう業務上のコンテキストを明記できているか、要件同士の参照関係を明示できているか、など
これらの観点から、AIに入力するテストベース(要件や仕様書など)の記述を整えることで、ユーザーにとっての価値につながるプログラムを作りやすくなります。
アウトプット品質 | 「使える」成果物が生み出されたかを見極める
AIでコーディングを行った場合、初歩的な記述漏れや誤記といった機械的にチェック可能な部分は、AI自身がある程度保証します。しかし、その成果物がユーザーにとって適切なものになっているかは人間が確認する必要があります。
特に見落とされやすい要素の1つが、UX(ユーザーエクスペリエンス)の評価です。画面表示の崩れやレイアウトの乱れといった基本的なUI(ユーザーインターフェース)上の問題は、近年のAIであればある程度検出できるようになっています。しかし、そのUIが「ユーザーにとって使いやすいかどうか」の判断は、AIには難しい領域です。
例えば、画面としては正しく表示されていても、「目的の操作までのステップが多くて迷ってしまう」「業務の流れと画面の順序が合っておらず使うたびに戸惑う」といった問題は、人間の間隔で評価する必要があります。
上流の妥当性確認を開発工程に組み込む
AI駆動開発の高速なサイクルのなかで、上記のようなインプット品質とアウトプット品質の確認を人力だけで運用するのは現実的ではありません。そのため、人間が判断すべき部分は人間が担いつつ、仕組みで回せる部分は自動化していくという役割分担が求められます。
その際にカギとなるのが、開発の上流工程に妥当性の確認を組み込むことです。要件や要求が本当にユーザーにとって正しいかを早い段階で確認し、その基準をテストとして繰り返し検証できる状態にしておきます。
例えば、次のようなアプローチが考えられます。
- 実際の利用者の属性情報やインタビューをもとに、ユーザーの思考を模倣する「ユーザークローン」を構築し、潜在的なニーズや不足している機能を洗い出す
- 抽出した要求をもとにユーザーストーリーや受入基準を作成する
- それをテストコードに変換してCI/CDパイプラインで自動実行し、妥当性の基準を常に担保し続ける
このように、人力に頼りきりにならない形で妥当性確認を回せるようにすることが、AI駆動開発のスピードと品質を両立させる近道といえるでしょう。
内部的な「効率」とユーザー目線での「品質」の両立に向けて
AIは、与えられた指示を正確に形にすることには長けています。だからこそ、その指示となる要件が本当に正しいか、成果物がユーザーにとって価値あるものかを見極める妥当性確認が、これまで以上に重要になります。
AIによって開発が高速化しても、ユーザーにとっての価値そのものが変わるわけではありません。むしろ、誰もが高速に開発できる時代には、「仕様通りに動くか」は前提となり、「ユーザーにとって正しいか」という妥当性の比重が高まっていきます。AIに渡すインプットの品質と、できあがったアウトプットの品質を両面から確認し、その確認を人力に頼らず回せる仕組みを整えることが、AIのスピードを活かしつつ品質を確保する開発の第一歩となります。
AGESTでは、「QA for AI駆動開発」として、要求・設計仕様の最適化からAI生成物への多角的なテストまで、AIによる高速開発と品質の両立を支援しています。受入テスト駆動開発(ATDD)の構築支援やユーザークローンを活用した上流の妥当性確認など、お客様のAI活用フェーズに合わせた品質保証をご提案します。
AI駆動開発における品質に不安をお持ちの方は、ぜひお気軽にAGESTにご相談ください。
