公開:

ソフトウェアテスト

テスト結果を報告書にまとめる方法 | 記載すべき項目や作成時の注意点を解説

テスト結果を報告書にまとめる方法 | 記載すべき項目や作成時の注意点を解説

テスト結果がドキュメントに詳しく残されておらず、改善点や発覚したリスクが関係者に正しく伝わらない。

こうした問題を抱えている現場は少なくありません。

そんなときに見直したいのが「テスト完了レポート」です。質の高い報告書を作成すれば、修正を効率的に進められるだけでなく、不具合の記録を社内に蓄積し、長期的な品質保証体制の強化につなげられます。

本記事では、テスト結果を報告書にまとめる意義や記載すべき内容、効果的な報告書を作成するためのポイントを解説します。

第三者検証の重要性|資料ダウンロード

テスト完了レポートとは

「テスト完了レポート(報告書)」とは、テスト実施期間の終わりに、プロジェクトの品質状態を開発チームやマネージャー層に正式に伝えるドキュメントです。「どこまでテストが完了したか」「残された不具合やリスクは何か」を明確にすることで、コード修正やリリース判断など、次のアクションを決定するための根拠として役立てることができます。

なお、「テスト完了レポート」(Test Completion Report)はソフトウェアテストの国際標準規格(ISO/IEC/IEEE 29119)で採用されている呼称で、実務では同様のドキュメントを「テスト結果報告書」「テストサマリーレポート」「テスト完了報告書」と呼ぶこともあります。
用語の解釈は人によって差があるため、現場のコミュニケーションでこれらの用語が出てきた際には、報告書の役割や記載内容について確認することをおすすめします。

テストの結果を報告書にまとめる意義とは

テストの結果をまとめた報告書は、改善に向けた情報共有だけでなく、クライアントへの説明や社内のナレッジ蓄積にも役立ちます。

ここでは、テストの結果を報告書にまとめる意義について詳しく見ていきましょう。

改善に向けた情報共有

発見された不具合や潜在的な課題を開発チームに伝達し、改善につなげることが報告書が果たす基本的な役割です。

具体的には以下のような改善に向けて活用することができます。

【報告書の活用シーン例】

1.コード修正の正確な進行
不具合の詳細や再現手順、影響範囲をドキュメント上に明示すれば、開発者が問題の詳細を把握しやすくなる

2. 潜在的な問題の発見
発見された不具合の傾向を分析することで、設計段階での考慮漏れや、特定のモジュールにおける品質リスクの発見につなげられる

3. スケジュール調整やリソース配分の見直し
報告書をマネージャー層に共有することで、プロジェクトの進行にかかわる意思決定をスムーズにする

トレーサビリティの確保

トレーサビリティとは、最初に定義した各要件がどのように実装・テストされているかを追跡できる状態を指します。

報告書で各テストケースがどの要件に対応しているかを明示することで「すべての要件が適切にテストされたか」を関係者が把握でき、品質管理の透明性につながります。特に外部の監査や顧客への品質説明が必要な場面では、報告書が大きな役割を果たします。

社内のナレッジの蓄積

不具合発生事例の記録を社内に蓄積できる点も、報告書の重要な意義の一つです。例えば、「決済機能では境界値のテストで不具合が頻出する」といった傾向が過去の報告書から把握できれば、次回の類似プロジェクトではその領域を重点的にテストする判断ができます。

過去の報告書を参照することで、新しく参画したメンバーも、テストのノウハウや分野特有のリスクを効率的に学ぶことができます。

報告書に記載する主な内容

テスト報告書を作成する際は、客観的な事実に基づいて、テストの実施内容と結果を抜け漏れなく記載する必要があります。

ここでは、国際規格(ISO/IEC/IEEE 29119-3)が示す「テスト完了レポート」の項目を参考に、報告書に盛り込むべき主な要素を解説します。

テストの概要と実施体制

まず、テストの前提となる内容や環境、実施体制(チームの体制・スケジュール)などをまとめます。当初の計画から変更点が生じた場合は、その経緯を併せて記載することで、ステークホルダーへの説明責任を果たします。

また、テストの中止基準(テスト環境の重大な障害、テストの前提となる外部APIの不備など)を設定していた場合は、基準の内容および実際に中止が実行されたかも記載します。

定量的なテスト結果

テストの結果として、当初計画していた完了基準をどの程度達成できたか、最終的な品質がどの程度確保されていたかを定量的な指標を用いて報告します。

具体的には、次のような項目をまとめます。

  • テストケース数(計画数、実施数、合格数)
  • 発見された不具合の数(優先度別、ステータス別)
  • テストカバレッジ(コードカバレッジ、要件カバレッジなど)
  • 改善の進捗状況
  • リソースの消費状況(工数、予算など)

なお、計画との差異が生じた項目については、結果に加えて原因分析と対応方針を記載し、改善につなげていきます。

記載例:達成状況

完了基準目標値実績値達成状況
テストケース実施率100%98.9% (433/438項目)
テストケース合格率95%以上96.1% (421/438項目)
重大不具合(優先度:高)の解決率100%100% (8/8件)
中程度不具合(優先度:中)の解決率90%以上94.4% (17/18件)
性能要件達成応答時間2秒以内平均1.3秒

記載例:テストケース実行状況

項目計画数実施数合格数不合格数未実施数
商品検索・閲覧85858320
カート・注文11211210930
会員管理68686710
決済95959230
管理画面78737035
合計438433421125

※未実施の項目については、その原因と対応方針を明記します。

記載例:不具合検出状況

優先度検出数修正完了対応中次フェーズ対応対応不要
高(致命的)88000
中(重要)1817010
低(軽微)2319031
合計4944041

記載例:リソース消費状況

項目計画実績差異差異の原因と対応
テスト期間40営業日44営業日+4日優先度「高」の不具合修正に想定以上の時間を要したため、回帰テストを追加実施。リリース日を4日延期して対応
テスト工数320人時352人時+32人時(+10%)上記の期間延長に伴う追加のテスト実施と、不具合の再現手順確認で工数が増大したため。次回以降は不具合報告テンプレートを改善し、効率化を図る
不具合修正工数160人時(想定)176人時+16人時(+10%)決済モジュールの不具合が想定より複雑で、根本原因の特定に時間を要したため。次期開発で、該当モジュールの技術的負債解消を図る

残存リスク

テスト期間中に解決しなかった、あるいは発見されたが許容された残存リスクを明確にします。

具体的には、リスクごとに想定される影響範囲と今後の対応方針を示し、優先度も明記します。これにより、関係者間でリスクへの対応や修正スケジュールについて合意を形成できるほか、開発チームが修正スケジュールを立てやすくなります。

【記載例】

検索結果の並び順表示(優先度:低)

  • 内容: 商品検索時に「人気順」と「新着順」を切り替えた際、並び順表示ラベルが更新前の状態のまま表示される事象を確認
  • 発生頻度:500回の操作テストで3回発生(0.6%)
  • 影響範囲:実際の商品並び順は正しく変更されているが、表示ラベルのみが不一致となる。ページ再読み込みで解消
  • 対応方針:ユーザー体験への影響は限定的と判断し、次回メンテナンス時(リリース後1ヶ月以内)に修正予定。本番運用開始後、ユーザーからの問い合わせ状況を監視

総合評価とリリース判定

報告したすべてのデータ(達成度、不具合状況、残存リスクなど)を総括し、プロジェクトの品質がリリース可能レベルにあるかの最終的な判定を記載します。

ここでの判断は、次工程(運用・保守)への移行を決定する重要な節目となります。

判定と併せて、リリース後に重点的に監視すべき項目や、今後の運用・保守チームへの引き継ぎ事項があれば、留意事項として明確に記載しましょう。

品質改善に活きる報告書を作成するためのポイント

曖昧な表現やわかりにくい記述を用いて報告書を作成した場合、本来の目的を果たすことができず、ドキュメントが形骸化されてしまいます。

最後に、継続的な品質保証活動につなげられる報告書を作成するために押さえておきたいポイントを解説します。

品質改善に活きる報告書を作成するためのポイント

解釈の余地のない表現で書く

テスト結果報告書を改善に役立てるためには、主観的な評価を排し、客観的な事実に基づいた記述をすることが欠かせません

数値化できる指標は可能な限り利用し、見る人によって解釈のブレが生じないように記載しましょう。これにより、開発者は迷うことなく問題の詳細を把握でき、手戻りのない確実なコード修正につながります。

【悪い例】
「APIのレスポンスが遅い」

【よい例】
「API呼び出しのレスポンスタイムが平均3.5秒で、要件で定められた1秒以内を満たしていない」

図や表で視認性を高める

報告書は、開発者だけでなく、プロジェクトマネージャー、経営層、(受託開発の場合は)クライアントなど、さまざまな立場の人が閲覧します。

グラフや図、表を積極的に用いて視認性を高めれば、文章だけでは伝わりづらい全体像を一目で理解できるようになり、結果的に関係者間の情報共有がスムーズになります。

レビューとチェックリストでクオリティを確保する

報告書を作成した本人は、主観や思い込みによって説明不足や論理の飛躍を見落としがちです。そのため、報告書作成後は、別のテストエンジニアや品質保証チームのメンバーによるレビューを行い、正確性と読みやすさを高めるようにしましょう。

第三者視点でレビューすることで、読み手が理解しづらい箇所や、補足が必要な情報を洗い出しやすくなります。

また、誤字脱字や単位の抜け、表記揺れといった初歩的なミスは、チェックリストにまとめておくと作成者によるセルフチェックで発見しやすくなります。これにより、ドキュメントの質の安定化につなげることが可能です。

報告書で、品質保証体制を継続的に改善する

質の高い報告書は、単なるテスト結果の記録を超え、トレーサビリティの確保や、長期的な品質保証体制を築くための重要な資産となります。

解釈のブレを生じさせない客観的な表現の工夫を心掛けながら、関係者全員がスムーズに理解できる読みやすさ・視認性を追求していきましょう。

チーム内でドキュメント作成のノウハウが不足している場合は、外部の専門機関との協業も有効な手段の一つです。

AGESTのドキュメントインスペクションでは、報告書を含めたテストドキュメントの作成・レビューを支援し、社内の長期的な品質保証体制の強化に貢献します。ドキュメントの作成・運用方法や自社の品質保証体制に課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

ドキュメントインスペクション サービス詳細ページ

TFACT (AIテストツール)

関連コンテンツ

この記事をシェア