公開:
テスト外注の社内決裁を通すコツ

システム開発プロジェクトにおいて、テストの質は製品やサービスの成功を左右する重要な要素です。
ソフトウェア開発をおこなう企業では、テスト工程を開発部門が担当することがめずらしくありません。しかし、より専門的な知見や技術を活用し、開発リソースを効率的に配分するという観点では、テスト工程を外部の専門家に依頼するのも有効な選択肢だといえます。
この記事では、テスト外注のメリットと、社内でその必要性を説得するためのポイントを解説します。
開発プロジェクトにおける『第三者検証』の重要性とは|資料ダウンロード
目次
テスト外注によって得られるメリット
まずは、テストの外注によって得られる主な2つのメリットをご紹介します。
1.品質を担保できる
外部の専門的なテスト会社に依頼するメリットの1つとして、品質を確保する第三者検証が可能になるという点が挙げられます。
自社の開発チームでは、どうしても「自分たちが作ったものは正常に動くはずだ」という思い込みが発生しやすく、テストの内容についても基本的な機能や動作を確認するものに偏ってしまうケースも少なくありません。一方で、第三者の視点を取り入れれば、自社では気づきにくい不具合を効率的に発見し、製品やサービスの品質を向上させることができます。
【第三者の視点を取り入れることで発見しやすくなる不具合の例】
- システムの処理限界を超えた際に発生する予期せぬ動作
- 入力値の制限事項に関連して発生する不具合
- 想定外の操作手順によって引き起こされるエラー
こうした異常系・準正常系の挙動を発見・改善できるのは、専門知識と豊富な経験を持つ外部テスト会社ならではの強みといえます。
2. 開発にリソースを集中させられる
開発担当者がテスト業務を兼務した場合、開発プロジェクトに割ける時間が減少し、本来の役割である「ソフトウェア開発」の進行が滞りやすくなります。その結果、リリーススケジュールが遅延したり、品質を担保し切れていないままリリースしてしまったりする可能性が高まります。
一方、外部の専門家にテスト業務を任せれば、開発者が新機能の設計や実装に集中する環境が整い、安定した新機能リリース、開発チームの生産性向上にもつなげられます。
テスト外注の社内説得が上手くいかないケース
先述の通り、テストを外注することで得られるメリットはさまざまあります。しかし、テストの外注を社内で提案しても、説得がなかなか上手くいかない場合も少なくありません。テスト外注化の説得が上手くいかない原因は主に3つあります。
1. テストは開発部門で完結するものと認識されている
多くの企業では、開発からテストまでを開発部門が一貫して担当することが一般的です。特に自社開発をおこなう現場では、上層部の間でテスト工程も開発チームが担うものとして認識されており、そもそもテストを外部に依頼するという選択肢が思い浮かばないこともめずらしくありません。
開発者がテスト設計・実行までを担当した場合、どうしても「仕様通りに動くかどうか」が中心のテストになってしまい、本来満たすべき品質基準に満たない結果となることもあります。
これまで取り組んでいなかったテスト外注の社内承認を得るためには、開発とテストの分業体制が品質・コスト・納期にどう寄与するのかを説明し、決裁者の理解を得る必要があります。
2. テスト外注化までの道のりが見えていない
テスト外注に対する上層部の理解が思うように得られないとき、自社が「何をどのように依頼すればよいのか」「どんな成果が得られるのか」を明確にイメージできていないケースも少なくありません。
外注化の初期フェーズでは、テストの対象範囲や進行方法をすり合わせる必要があるため「担当者の工数が増えるのではないか」という懸念も生まれがちです。

この課題を克服するには、社内に向けて提案する前にテスト会社との間でプロジェクト推進の具体的な方法や成果物、スケジュール等について擦り合わせることが重要です。これにより、外注化の道のりを決裁者がイメージしやすくなります。
3. テスト用の予算を確保していない
一般的に、開発予算の約3割はテストに充てられるといわれています。しかし、多くの企業では、その予算が社内テストを前提として配分されており、外注を想定したコスト割り当てがないため、社内での説明や予算の再調整が難航しやすい傾向があります。
特に、短期的な成果を重視する開発組織では、予算を配分する際にもまずは目に見える成果を優先する傾向にあります。テスト工程は「不具合を未然に防ぐためのもの」であり、直接的な価値が見えづらいことから、テスト外注の必要性を具体的なデータや事例をもとに説明する必要があります。
テスト外注の社内決裁を得るためのポイント
テスト外注について社内の承認を得るには、決裁者の考えや懸念を正しく把握し、それを解消するためのデータや事例を準備する必要があります。
最後に、テスト外注の上申時に押さえておくべきポイントを紹介します。
自社の決裁者がテスト外注に否定的な理由を把握する
決裁者が外注に否定的な態度を取る理由として、主にコストの増加、依頼による工数の増加などが挙げられます。外注という選択を提案した際に決裁者が難色を示す場合は、相手が何を懸念しているのかを正しく把握することが大切です。
会議やヒアリングを通じて、何を懸念しているのか、その懸念が生じている原因は何なのかを丁寧に聞き取りましょう。また、決裁者がプロジェクトの中で重視する要素(予算や品質)を確認すれば、より具体的な説得方法を検討しやすくなります。
決裁者が懸念している要素を払拭するための情報を集める
テスト外注に向けた社内説得をスムーズに進めるためには、まず決裁者の懸念を払拭するための情報を用意することが欠かせません。特に、「外注にあたって自社側でどのような作業が発生するのか」「どのようなプロセスを経て、どんな成果物が得られるのか」を明確に説明できるように準備すると、決裁者の安心感につながります。説得材料として役立つ情報としては、例えば以下のようなものが挙げられます。
- 外注に際して自社側で発生する作業
(例:提供すべき資料、業務知見のレクチャー、改修作業など) - 外注プロセスの具体的な流れ
(例:要件定義、テスト設計・実施、フィードバックの仕組みなど) - 外注の結果、得られる成果物
(テスト計画書、テスト結果報告書、不具合報告書など)
このように、外注導入の具体的な負担と成果を事前に整理し、決裁者に対して明確に示すことで、スムーズな社内承認につながりやすくなります。
“決裁者の利益” を主語にテスト外注を提案する
テスト外注が事業全体に与えるポジティブな影響について、決裁者の視点に立ちながら説明するのも効果的な手段です。これにより、外注の必要性をより説得力のある形で伝えられます。
【決裁者の納得感につながりやすいメリットの例】
- 解約率低下による収益性の改善
- 品質改善による顧客満足度の向上
- スピード感あるリリースの実現
- 開発後に発生する不具合対応コストの削減
予算のなかでできる範囲内で外注に取り組む
まずは小規模なプロジェクトや、少額で始められる探索的テストから始めることで、リスクを抑えながら外注の効果を明らかにする方法もあります。
実際に当社でも、まずは一部の機能を対象とした探索的テストを実施した結果、短期間で複数の不具合を発見した事例が存在します。こうしたスモールスタートによる成果を社内で共有することで、テスト外注の有効性を段階的に伝えることができます。
まずは予算内でできる範囲で試験的に外注をすることで、初期段階での負担を軽減しつつ、プロジェクトの進行に応じた外注範囲の拡大につなげやすくなるでしょう。
来期での予算獲得も視野に入れる
今期分の決裁がどうしても難しい場合、来期の予算獲得を目指すのも1つの手です。
テスト外注費用に関する概算見積もりを決裁者に提示した上で、次年度の予算計画に外注費用を組み込んでもらう状態を目指しながら準備を進めていきましょう。
テスト外注費用に関する概算見積もりを提示する際には、現行プロジェクトの課題やリスクを明確にし、外注という手段がそれをどのように解決するのかを示すことが重要です。補足資料として成功事例や費用対効果の試算を用意し、具体的なメリットを決裁者に伝えれば、予算確保の可能性を高められます。
ソフトウェアテストサービスの紹介
AGESTでは、ソフトウェア開発における、テスト工程を請け負う『ソフトウェアテストサービス』を提供しています。開発スケジュールに合わせた柔軟なリソース配分と高品質なテスト設計を通じて、企業が直面するプロジェクトの課題を解決に導く支援をおこなっております。
詳しくは、サービス詳細ページをご覧ください。