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ソフトウェアテスト

QCDの最適なバランスを保つソフトウェア開発体制

デジタル化が急速に進む現代、ソフトウェアの品質は単なる技術的要素にとどまらず、ビジネスの競争力を左右する重要な鍵となります。

一方で、QCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)のバランスを取ることは、多くの企業にとって避けては通れない難題です。特に、限られた予算やタイトな開発スケジュールのなかで、いかにして高い品質を確保するかに頭を悩ませる企業は少なくありません。

本記事では、ソフトウェア開発における課題と、その解決に向けた考え方について解説します。

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QCDとは

QCDとは、Quality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期)の頭文字を取った言葉で、製品やサービスの提供において重要な3つの要素を指します。ソフトウェア開発においても、この3つの要素をいかにバランスよく実現するかが、プロジェクトの成功を左右します。

特に自社でソフトウェア開発を行う企業にとって、QCDの重要性は年々高まっています。品質の低いソフトウェアは顧客離れを招き、過度な費用投下は収益を圧迫します。そして納期の遅延は企業の売上に直接影響を与えます。

しかし実際の開発現場では、限られた予算と時間の制約の中で、3つの要素のバランスを取ることが難しく、特にQualityの優先度を下げざるを得ない傾向があります。

Qualityが軽視されがちな理由

限られた予算や納期の中では、品質確保が二の次とされるケースも少なくありません。その背景には、さまざまな要因が存在しています。

CostとDeliveryが先に決まっている

多くの開発プロジェクトでは、Cost(予算)とDelivery(納期)があらかじめ決定されています。特に、限られた予算や厳しい納期の中では、品質向上のための工数増加やスケジュール調整が難しいのが現実です。

この結果、ソフトウェア開発の現場ではプロジェクト全体でQualityが優先されない傾向があります。開発初期段階では品質の重要性が認識されているものの、納期が迫ってくると「まずはリリースして、後から対応しよう」という判断が下されることは決して少なくありません。

Qualityは定量的評価が難しい

CostやDeliveryと比較して、Qualityは、どの程度のテストを実施すれば十分な品質が確保できるのか、どうなっていれば品質が高いといえるのか、明確な基準を設定するのが難しい要素です。

例えば、どのような不具合まで許容するか、エッジケースへの対応など、判断基準が曖昧なケースは多く存在します。また、Qualityは数値で表現しにくいため、プロジェクト全体における優先度が低くなりがちです。

マーケット変化のスピードが激しい場合、完璧な品質を追求するよりも、ある程度の品質でリリースを優先することが求められる場合もあります。これが、Qualityの確保が後回しにされる理由の一つとなっています。

優先度の高い機能にテストのリソースがさかれる

開発期間が限られるなかでは、クリティカルな機能の品質確保が優先されるのが一般的です。例えば、決済機能やログイン機能などに不具合が生じた場合、その影響は広範囲に及び、ユーザー体験やビジネス全体に重大な影響を与える可能性があります。そのため、こうした重要な機能に関しては、品質確保が必須とされています。

一方で、影響が限定的な機能や、誤字脱字のような小さな不具合については、十分なテストが実施されないことも少なくありません。また、基本的な動作確認だけでテストを終え、エッジケースや異常系の検証が後回しになる場合もあります。

このような状況下では、ユーザーが快適に使用できる品質レベルに達していないままリリースされる可能性も否めません。

限られた予算や納期のなかでQualityを高めるためのポイント

高品質なソフトウェアを実現するためには、単なるテスト作業に留まらず、開発全体で品質を意識したアプローチをとることが重要です。限られた予算や納期のなかでQualityを向上させるための考え方を解説します。

規格に沿った仕様書を作成する

標準化された規格や基準に沿って仕様書を作成することで、品質管理の基礎を固めることができます。例えば、ソフトウェアテストの統合的な国際規格である「ISO/IEC/IEEE 29119」に沿って、テストプロセスやドキュメントを標準化すれば、一定の品質が担保されるだけでなく、開発チーム内での認識の統一も図れるでしょう。

仕様書によってテスト計画の立案や品質評価の基準が明確になると、Qualityは保たれやすくなります。また、明確な品質基準があれば、将来的な保守や機能追加の際にも一貫した品質管理を継続することができます。

仕様書以外の観点でもテストを実施する

仕様書に記載された要件に沿っているかを確認するだけでなく、想定外の使用方法や仕様や動作の前提条件が満たされない状況下で不具合が発生しないかどうかを確認する「異常系テスト」を適切に実施することも重要です。

仕様外の予期せぬ事象に対するシステムの耐性を検証する異常系テストでは、例えば数値フィールドに文字列が入力された場合でも適切なエラーハンドリングができるかどうかを確認します。さまざまなケースを想定したテストを実施することで、システムの品質向上につなげられます。

また、テスターの知識や経験、直感を活かしながら柔軟にシステムを検証できる探索的テストやアドホックテストも、仕様書では想定していなかった不具合の発見に役立ちます。ただし、このような広範なテストを実施するには、専門的な知識と豊富な実務経験の両方が必要とされます。

上流工程からQAの思考を入れる

テストフェーズに入った段階で初めて品質管理に着手するのではなく、要件定義や設計段階から品質を意識した考え方を取り入れることで、Qualityの担保はしやすくなります。

特に重要なのは、品質管理の専門家が要件定義段階から参画することです。開発者とは異なる視点で要件を精査すれば、実装段階では気づきにくい品質上の課題を早期に発見できます。このアプローチにより、手戻りのリスクを低減し、開発全体のコストダウン、納期遵守にもつなげられます。

品質管理の専任担当者 / 部門を置く

品質管理の専門知識を持った担当者や専門部門を設置することで、一貫した品質管理が可能になります。開発者がテストまで担当する場合と比べ、客観的な視点で品質評価をおこなえるため、より信頼性の高い製品開発にもつながります。

ただし、品質管理の専任担当者の採用や育成には時間とコストがかかる点に注意が必要です。加えて近年では、品質管理の専門家が不足しており、採用も困難な状況が続いています。そのため、外部の専門家や専門企業との連携を検討することも、自社のリソースを活用しながら適切な品質管理体制を構築するための現実的な選択肢の1つとなるでしょう。

Qualityの優先順位付けをする

すべての機能に同じレベルの品質を求めるのではなく、機能の重要度に応じた品質要件の優先順位付けをする方法もあります。クリティカルな機能は重点的にテストをしつつ、影響範囲の少ない機能についても品質基準を設定した上で、計画に基づいてテストを実施します。

優先順位付けには、「どの機能がビジネスにとって重要か」「どのような不具合がユーザー体験に大きな影響を与えるか」といった多角的な視点での判断が求められます。そのため、この優先順位付けの工程は、品質管理の経験とノウハウを有する人にも入ってもらうことをおすすめします。

ソフトウェアテストサービスの紹介

ソフトウェア開発におけるQCDのバランス改善を目指し、テスト設計・実施のアウトソースを提供しています。

豊富な経験とノウハウを活かし、仕様書に基づいた基本的なテストはもちろん、想定外の不具合もスムーズに検出。また、テスト設計から実施までを一貫して代行することで、お客様がコア業務である開発に集中できる環境を整えます。

詳しくは、サービス詳細ページをご覧ください。

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