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アジャイル開発でスピードと品質を両立するには?よくある4つの失敗パターンから考える

アジャイル開発でスピードと品質を両立するには?よくある4つの失敗パターンから考える

現代の市場変化の速さに対応する手段として普及したアジャイル開発。一方で、スピードを優先するあまり、「テストが後手に回る」「不具合対応でスプリントが停滞する」といった問題に直面するケースは少なくありません。

アジャイル開発での品質保証(QA)の失敗には、いくつかのパターンが存在します。そのメカニズムを捉えたうえで組織的に対策を進めることがスピードと品質を両立するカギを握ります。

今回は、アジャイルQAの典型的な失敗パターンを整理しながら、開発スピードの事業価値を最大化するためのポイントを解説します。

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アジャイル開発の普及と、企業が直面する課題

アジャイル開発で品質問題が頻発する背景には、近年のソフトウェア開発会社を取り巻く市場動向や消費者の行動傾向があります。

まずは、アジャイル開発普及の背景にあるソフトウェア市場の動向と、それに伴い企業が直面している課題について見ていきましょう。

市場の飽和とニーズの変化の加速

アジャイル開発が急速に普及した背景には、リリースの遅れがビジネスの致命的な損失に直結する危機感が高まっている事実があります。

従来のウォーターフォール開発のように数年かけてプロダクトを仕上げる手法では、変化の激しい現代のニーズに応え続けることが難しくなっています。例えば、都心に住む30〜40代のターゲット層が関心を持つ対象は、数年前と今とでは劇的に変化しています。

こうした状況下で1〜2年という歳月をかけて開発を進めても、ようやくリリースに漕ぎつけた頃にはトレンドが様変わりし、「設計通りだが、誰にも選ばれないサービス」になってしまうリスクが拭えません。

設計通りだが、誰にも選ばれないサービス

市場の変化による機会損失を回避しながら、なるべく早く顧客に対して価値を提供する。こうした課題に対応しやすいアジャイルの手法は、現代のビジネスにおける一種の生存戦略ともいえます。

複雑化する品質要件

スピードが求められる一方で、ソフトウェアに要求される品質の難易度はかつてないほど高まっています。チェックすべき観点が、単に「機能が正しく動くか」という域を超えて膨大になっているためです。

例えばECサイトでは、「商品を購入できる」という基本機能に加え、動画ベースの魅力的なコンテンツ表示や、SNSとのシームレスな連携といったリッチなユーザー体験(UX)が「当たり前」の品質として期待されるようになっています。こうした機能を追加した場合、当然ながら検証工数は大きく膨れ上がります。

さらに、「ユーザーのニーズを正しく分析するための行動ログや属性データがシステム間で滞りなく処理されているか?」といった裏側のデータ処理における整合性も無視できません。ここが機能しなければ、顧客の動きを正しく分析できず、サービスとしての価値を最大化するための改善も行えなくなります。

このように、「高度なUX」と「緻密なデータ処理」の両面の品質を短期間で担保しなければならない状況は、現在のQAを難しくしている一つの大きな要因といえます。

体制が整わないまま手法だけをアジャイルにしても、品質保証のプロセスが追いつかずに、開発全体が停滞してしまうケースは後を絶ちません。

アジャイル開発の品質保証でよく見られる4つの失敗パターン

アジャイル開発における品質保証が困難な理由は、要求されるリリース頻度の高さだけではなく、品質保証の専門知識を持つ人材の不足や、体制の不備など、多くの要因が絡み合っています。

ここでは、多くの現場で陥りがちな4つの失敗パターンについて解説します。

アジャイル開発の品質保証でよく見られる4つの失敗パターン

失敗パターン① 品質保証視点が欠けたままスプリントが進行する

ウォーターフォールからアジャイルへ体制移行したチームでよく見られるのが、アジャイル体制の導入が形式的なものにとどまり、品質保証のプロセスが十分機能しないという現象です。

本来、ウォーターフォール開発では、設計書通りの実装を重視しますが、アジャイルでは「スプリントごとにユーザーの要求を満たしているか」が問われます。この違いを理解せず、単にこれまでの工程を短く区切っただけの「ミニ・ウォーターフォール」の状態に陥ると、開発の途中で不具合や仕様の不備が次々と見つかり、修正対応によってプロジェクト全体が滞留し始めます。結果として、アジャイル最大のメリットであるはずのスピード感が失われてしまうのです。

失敗パターン② 開発の遅延によりテストの時間が不足する

1スプリントが数週間という短いサイクルでは、数日の遅延がテストのスケジュールに大きく影響します。リリースの延期が許されない状況でテストの時間が不足し、多くの不具合が残ったまま本番稼働へ移行してしまうケースは決して珍しくありません。

さらに、外部のテストリソースを活用している場合には、開発が遅れている間、テスト人材を待機させざるを得ないという問題も発生します。このようなケースでは、プロジェクトのコスト効率が悪化するだけでなく、外注費の損失を最小限に抑えようとして開発を急ぎ、さらに品質のムラを生むという悪循環に陥りやすくなります。

失敗パターン③ テスト設計の属人化・ブラックボックス化が進む

テスト設計が特定のハイスキル人材の判断や企業の伝統的なワークフローに依拠することで、設計内容がブラックボックス化する、観点が偏るといった問題も多くの現場で見られます。特に歴史の長い企業ほど、一度確立した設計方法を(よい面も悪い面も含め)数十年と採用し続けていることが少なくありません。

一見、ベテランの知見で回っているように見えますが、特定の個人に依存した体制では、その人材が実務に忙殺され続け、組織としての成長が止まってしまいます。また、開発者が「想定の範囲内」で作ったテストケースだけでは、イレギュラーな操作や例外的な状況に対応しきれません。幅広いリスクを考慮したテストには、開発とは異なる品質保証の専門知識が必要なのです。

失敗パターン④ レビューが形式だけの作業になる

設計書やテストケースに対するレビューが、形を整えるだけの形骸化した作業になっている現場も少なくありません。背景には、レビュアー自身が複数のプロジェクトを兼務し、十分なリソースを割けない実情があります。

また、レビューの観点がドキュメント化されていないことにより、判断基準が個々人の主観に依存し、結果として精度にばらつきが出ることもあります。


こうして見逃された欠陥は、リリース後のユーザーからの不満や、ブランド価値の毀損という形で表面化することになります。

アジャイル開発で品質保証を成功させるためのポイント

アジャイル開発で起きる品質保証の失敗は、現場の“努力不足”で片付けられる問題ではありません。開発スピードとビジネス成果を両立させるためには、組織として体制やフローを根本から改善する必要があります。

最後に、アジャイル開発で品質保証を成功させるためのポイントを解説します。

アジャイル開発で品質保証を成功させるためのポイント

上流工程から品質保証の観点を取り入れる(シフトレフト)

まず大切なのは、不具合が発覚してから対処するのではなく、設計の段階から品質を作り込む「シフトレフト」の考え方を取り入れることです。

アジャイル開発ではスプリントごとにユーザーの要求を実現することが目標となるため、「この仕様・設計でユーザーが困らずに目的を達成できるか」を考える必要があります。

例えば、「画面上で情報がどのように配置されていれば、ユーザーが迷わず操作できるか」「ニーズに合ったレコメンドを届けるために、内部でどのようなデータの保存が必要か」など、ユーザーが快適かつ安全に目的を達成するための観点を、設計段階で取り入れておくとよいでしょう。

テスト工程を待たずに仕様の不備を潰しておけば、後の工程もスムーズに進行しやすくなります。

ビジネスインパクトに基づいた優先順位付けを行う

短いスプリントのなかでも必要なテストを終えるためには、以下のような判断基準をもとに、品質要件の優先順位を明確化することが重要です。

  • 機能の使用頻度
  • プロダクトの主目的に対する機能の位置づけ
  • 不具合発生時のリスクの大きさ

こうした優先順位をふまえてテスト計画を立てることで、開発の遅延等によりテストの時間が限られたとしても、致命的な不具合を回避しやすくなります。

関連:致命的な不具合がリリース後に発覚する原因とは | Never・Must・Wantの思考法で品質を体系化する

テストの最適化と柔軟なスケジュール策定に取り組む

リソースが限られている現場こそ、テスト設計に専門的な技法を取り入れ、工数を最適化することをおすすめします。これは単にテストの数を減らしたほうがいいということではなく、少ない手数で最大の網羅性を担保し、重複を排除することを指します。

また、QAの観点から開発スケジュール全体を調整することも重要です。例えば「モジュールAとBさえ完了すれば、Cが未完成でもメイン機能の結合テストは先行できる」といった柔軟な進め方をすることで、開発の遅れをテスト工程で吸収し、プロジェクト全体としてのスピードを維持することが可能になります。

テスト設計の考え方やレビューの観点をナレッジとして蓄積する

経験やスキルのあるメンバーのノウハウに設計が依存している場合は、そのメンバーの知見をドキュメントとして社内の共有資産化しましょう。これにより、品質保証プロセスを標準化しつつ、スキルの高い人物のリソース不足解消が期待できます。

また、レビューの観点をチェックリストなどで一覧化することで、慌ただしい現場でも「ここまでチェックすればいい」「逆に、これらの点はチェックしなければ後々のリスクにつながる」という認識を共有でき、レビューの形骸化を防ぎやすくなります。

品質保証プロセスの改善は企業競争力の向上につながる

現代のソフトウェア開発では、開発スピードと品質のシビアな両立が求められます。ビジネス成果につながるプロダクトを実現するためには、品質保証が失敗しやすい背景を理解したうえで、組織としての改善を積み重ねることが重要です。

テストや品質保証のナレッジに不安がある場合は、外部のテスト支援会社との協業も有効な手段の一つとなります。専門的な知見に基づき品質保証プロセスを改善し、場合によってはテスト設計・実行を委託することで、開発者が本来の業務である設計・実装に注力し、結果的に企業の競争力向上にもつなげられます。

AGESTでは、テスト戦略の立案から設計・実施まで、お客様の状況に合わせた品質保証活動を支援しています。自社の品質保証プロセスに課題をお持ちの方は、ぜひ一度AGESTにご相談ください。

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