W字モデルとは？進め方やメリット・デメリット、V字モデルとの違いまで解説

リリース直前の不具合や手戻りによって、開発スケジュールが圧迫されるケースは後を絶ちません。特にテストを最後にまとめて行うウォーターフォール開発では、終盤まで設計上の不備が見過ごされ、結果として後工程で大幅な修正が発生するリスクがあります。

こうした問題の解決に向けて活用したいのが、開発初期から品質保証の観点を組み込む「W字モデル」という思考のフレームワークです。

本記事ではW字モデルの定義やほかの開発モデルとの違い、現場での活かし方について解説します。

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W字モデルとは

W字モデルは、開発初期から品質を高めるための発想を促すフレームワークです。まずはその基本概念を見ていきましょう。

定義と特徴

W字モデルとは、上流工程からテストの視点を取り入れ、開発と品質保証を並行して進めるフレームワークです。要件定義の段階からテスト観点を意識することで、曖昧な要件やリスクの早期発見につながります。

特に、設計の段階で検証視点を持つことが求められる医療・金融系のシステム開発など、高い水準の品質が求められる領域では、この考え方が重視される傾向にあります。

V字モデルとの違い

先述の通り、W字モデルはV字モデルの発展形として生まれた思考法であり、両者の間には以下のような違いがあります。

V字モデル

開発工程とテスト工程を紐づけて捉えるが、実際の作業は開発・テストと段階的に進める

W字モデル

開発工程とテスト工程を紐づけて捉え、実際に開発とテストを並行して進める

このように、従来のV字モデルではテストが後工程に位置付けられていたのに対して、W字モデルでは開発とテストの設計を同時に進めます。これにより、初期フェーズではV字モデルと比較して動きが鈍化しやすい一方で、設計段階での問題を早期に発見し、手戻りを削減しやすくなります。

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主要な開発手法との関係

W字モデルの考え方は、さまざまな手法に応用されています。ここでは、ウォーターフォール開発とアジャイル開発におけるW字モデルの発想の取り入れ方を見ていきましょう。

ウォーターフォール開発

設計・実装・テストと段階的に進めるウォーターフォール開発では、設計上のミスがテストで発覚した際に多くの手戻りが生じるという課題があります。

この課題に対し、要件定義や基本設計の段階からテスト観点を検討しておくことで、早期にリスクを見つけやすくなります。開発初期に品質保証の視点を組み込むことで、後工程のトラブルやコスト増加を抑えることが可能です。

アジャイル開発

W字モデルはウォーターフォール開発を前提として生まれた思考法ですが、「開発と品質保証を同時に進める」という考え方は、アジャイル開発でも応用可能です。各スプリントで機能設計段階からテスト計画や設計を進めることで、モジュールや機能ごとの品質を確保しやすくなります。

W字モデルのメリット

W字モデルの考え方は、正しく機能すれば品質や開発効率の面で多くの利点をもたらします。ここでは、W字モデルのメリットを大きく3つに分けて解説します。

テストのリソース確保による品質向上

従来のウォーターフォール開発ではテストが実装完了後に始まるため、設計や準備の時間が限られ、結果として必要なテストが実行できずに終わることが少なくありません。

一方、W字モデルの考え方に則って、上流工程からテスト設計を開始し、時間をかけてテストケースを練り上げれば、質の高いテストを行うことができます。

後回しにされがちな非機能テスト（負荷テスト・性能テストなど）にも計画的に着手でき、高品質なプロダクトの実現につながります。

工期短縮とコスト削減

従来のウォーターフォール開発では、テスト段階で設計上の不備が発覚した場合、実装したコードが無駄になるのが難点です。

一方、設計と並行してテストを行うW字モデルのフレームワークを実践すれば、実装前に問題を発見し、実装後の手戻りを最小限に抑えられます。

特に、類似のロジックをいくつも組むプロダクトでは、設計段階で不備を発見しておくことで、大量のコンポーネントで実装し直すという事態を回避できます。

コミュニケーションの円滑化

開発担当者とテスト担当者が初期段階から連携して作業を進めるW字モデルの思考を取り入れれば、担当者間のコミュニケーションが自然と活発になります。

また、設計段階からテスト側の視点を共有すれば、開発チームとテストチームの間で共通認識を形成しやすくなります。結果として、仕様の解釈に齟齬が生じにくくなり、後工程でのトラブル回避につながるのです。

W字モデルのデメリット

W字モデルの考え方を正しく活用すれば多くのメリットがある一方で、フレームワークの実践にあたってはいくつかの課題も伴います。

ここでは、W字モデルのデメリットについて整理します。

管理と人材確保の難しさ

各工程で開発担当者とテスト担当者が同時に作業を進める場合、進捗管理やリソース配分の難易度が上がります。誰がどの作業を担当し、どの時点で何を完了させるべきなのかを明確にしないと、作業の重複や漏れが発生するリスクがあります。

また、設計段階から潜在的な問題を発見できるテストエンジニアや、開発とテスト両方のプロセスに理解の深いプロジェクトマネージャーなど、高度なマネジメントスキルを持つメンバーが必要であり、人材確保がハードルとなることも少なくありません。

正確な情報共有の必要性

要件や設計の内容が固まっていない上流工程の段階から並行作業を進めると、情報共有不足による行き違いが発生しやすくなります。例えば、機能を1つ削除したにもかかわらずその旨がテストチームに伝わっていなかったことで、不要となったテストケースを実行してしまい、「不具合」として報告されるといった行き違いが考えられます。

こうした行き違いを抑えてプロジェクトの効率を高めるために、設計書のバージョン管理や、変更内容の通知体制など、情報共有の仕組みを整備することが不可欠です。

開発初期の工数増

各工程でテストを実施した場合、従来の手法と比較してフェーズごとの作業量が増加する傾向があります。特にプロジェクトの初期段階では、開発とテストの両方を並行して進めるための体制構築に時間がかかることもあります。

とはいえ、こうしたコストは“先行投資”と捉えることもできます。初期段階で品質を作りこむことで、後工程での手戻りや不具合対応のコストを削減できるため、長期的には費用対効果が高くなる可能性もあります。プロジェクトの特性や品質要件に応じて、総合的に判断することが重要です。

上流から品質を考える視点で、手戻りの少ない開発へ

W字モデルは、設計や要件の段階から「品質をどう担保するか」を意識する思考の枠組みです。このフレームワークを活かすには、関係者間での早期のすり合わせ、設計書や観点の明文化、変更時の情報連携など、仕組みの整備が重要です。

AGESTでは、こうした「上流から品質を考える」発想に基づき、プロジェクトに応じたテスト戦略や品質保証プロセスの設計支援を行っています。

自社の品質保証プロセス・体制の見直しをご検討中の方は、お気軽にご相談ください。

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