TBSホールディングス初となるアジャイル開発への挑戦。AGESTの伴走支援が、大規模ID基盤の開発を成功に導く。
認定放送持株会社・傘下子会社およびグループの経営管理、不動産事業
- 複数ベンダーが関わる大規模システム開発、プロジェクト管理の複雑化やTBS初のアジャイル開発への移行など、自社の課題に柔軟に対応できる支援会社を探していた
- 受け入れテストの依頼で開発体制の基盤ができたことで、アジャイル開発へのスムーズな移行に成功
- テストの自動化支援で年間約700万円のコスト削減見込みと、性能テスト実施で年間約100万円のコスト削減に成功
放送事業を中心に、配信、海外へのコンテンツ販売、ライブ&ライフスタイル、不動産など多角的な事業展開を行うTBSホールディングス様。同社では、グループ横断的なID基盤「TBS ID」の開発・運用にあたり、当社の「受け入れテスト」「性能テスト」サービスをご利用いただき、その後「アジャイルテスト支援」「テスト自動化支援」サービスもご活用いただきました。今回は株式会社TBSホールディングス マーケティング局 ビジネス戦略部/TBSグループID事務局の藤居様、川合様、そして株式会社TBSグロウディア IT事業本部の市川様、星様に、ご依頼いただいた経緯やご依頼内容、今後の展望などについてお聞きしました。
メディアグループからコンテンツグループへ
はじめに、貴社の事業内容を教えてください。
川合様:TBSは2020年から「最高の“時”で、明日の世界をつくる。」というブランドプロミスを掲げ、放送の枠にとらわれないコンテンツグループへの変革を目指しています。テレビ放送だけでなく、配信事業、番組海外販売、ライブ&ライフスタイルのメディアコンテンツ事業、雑貨販売、通信販売、教育事業、不動産事業など多様な事業を展開しています。2030年までのTBSグループの戦略を定めたVISION2030で、放送外事業の収入を全体の60%にするという目標を掲げています。
現在所属している部署についても教えてください。
川合様:私はTBSホールディングスのマーケティング局に所属しています。主に「TBS ID」プロダクトの価値向上や、データ分析に基づく機能開発の推進などを担当しています。
藤居様:私も川合と同じく、TBSホールディングスのマーケティング局に所属しています。「TBS ID」リリース時に開発リーダーを務め、現在は「TBS ID」をグループ内のサービスに導入する業務を担当しています。
市川様:私はTBSグロウディアのIT事業本部に所属しており、TBSからの業務委託という形でPM領域に携わっています。主に開発チームの一員として、プロジェクトの進行管理や各部門との調整などのマネジメント業務を担っています。
星様:私もTBSグロウディアのIT事業本部に所属しており、「TBS ID」プロジェクトの技術面を担当しています。具体的には、システムの設計から実装、テストまで、技術的な側面を統括しています。
AGESTを選んだ決め手は、アジャイル開発における豊富な実績と柔軟な対応力
AGESTに依頼する前に抱えていた課題について詳しく教えてください。
藤居様:これまではサービスごとに顧客情報が散在しており、それを集約するために新しいシステムが必要でした。そこで私がリーダーを務め、2022年8月から「TBS ID」の開発を推進することになりました。
「TBS ID」を開発するにあたり、そのシステムは大規模なものになることが予想されていました。理想としては1つのベンダーにすべてを任せたかったのですが、専門性の高い領域が多く、なかなかベンダーを1つに絞ることはできませんでした。結果的に4つの基盤(顧客基盤、認証基盤、インフラ、分析基盤)を複数のベンダーが担当する形になっていたので、コミュニケーションコストが高くなり、さらにプロジェクト管理も複雑化している状態でした。
また「TBS ID」の開発をウォーターフォール型から徐々にアジャイル型に移行することを検討しており、そのタスクにも柔軟に対応できるベンダーを選定する必要がありました。
AGESTを知ったきっかけと、AGESTに依頼することを決めた理由について教えてください。
藤居様:AGESTとは以前の部署でお付き合いがあり、その時から柔軟な対応力を評価していました。特に、どのような要望にも迅速かつ丁寧に対応していただける点に安心感を持っていましたね。また、アジャイル開発における豊富な実績があり、その経験を活かしていただけると感じたため、今回のプロジェクトでもAGESTに依頼することを決めました。
TBS初となるアジャイル開発への移行に成功し、大幅なコスト削減を実現
AGESTからどのような支援を受けたのか、具体的に教えてください。
藤居様:AGESTには主に4つの工程を支援していただきました。
1つ目は、リリース前の受け入れテストです。複数ベンダーの各システムを結合するテストで、プロジェクトの品質管理も含めてサポートをしていただきました。今回のシステムはフルスクラッチで構築した部分が大半で、仕様の把握から始まり、ベンダー側で実施するテストの観点精査、受け入れ総合テストの観点整理、さらに総合テスト設計やテスト仕様書の作成まで、AGESTに包括的にサポートしていただきました。
この基盤が整ったことで、運用フェーズにおけるアジャイル開発でのテストへも円滑に移行でき、品質を確保することができたと感じています。
2つ目は、リリース前の性能テストです。複数のシステムが複雑に結合された環境で、限界性能を把握するための負荷試験を実施いただきました。テレビ局のサービスと連携するため、放送に伴うスパイク的なアクセスを処理できることが求められており、インフラ運用の観点からも重要なデータを取得する必要がありましたが、AGESTに安心してお任せすることができました。
3つ目は、リリース後のアジャイルテスト支援です。アジャイル型の開発に移行するなかで、2週間スプリントに合わせてAGESTにテスト業務を継続的にサポートしていただいています。AGESTには開発チームと伴走しながら仕様を把握し、リリースに向けたテスト設計に柔軟に対応していただいています。
4つ目は、テスト自動化です。TBS側はマーケティング局を中心に活動しており、開発リソースが限られている状況でした。そのため、効率よく開発を進めるためには、先進的な技術を活用しつつ、テストの自動化が必要でした。
AGESTに依頼をして、実際にどのような成果が出たのか教えてください。
藤居様:AGESTにサポートいただいたおかげで、大きなトラブルもなく「TBS ID」を無事にリリースすることができました。システムローンチの際や、その後の運用フェーズにおいても、AGESTにはアジャイル開発に対応した品質担保の考え方や、テスト設計、そしてテストプロセスの整備を手厚くサポートしていただきました。このおかげで、初めてのアジャイル開発への移行もスムーズに行うことができ、運用後も円滑に進められています。
また、AGESTの協力により、性能試験を通じてサーバー1台あたりの処理能力を正確に把握することができたため、インフラの台数を最適化することができました。これにより、年間約100万円のコスト削減につながりました。
さらに、自動テストの導入を通じて、品質管理が大幅に効率化され、試算では年間約700万円の費用削減が見込まれています。これにより、テストプロセスが改善されただけでなく、より確実な品質担保が可能となりました。また、我々のチームはマーケティングに集中できるようになったことも大きな成果だと考えています。
単なるテストベンダーではなく、チームの一員として伴走支援してくれた
AGESTの支援体制に対する評価を教えてください。
市川様:AGESTは単なるベンダーではなく、プロジェクトチームの一員として動いていただいています。発注者と受注者という関係ではなく、一緒にプロジェクトを進めている感覚があり、とても頼もしい存在です。具体的には、2週間おきのスプリントでの開発において、テストやリリースのタイミングでリスクマネジメントの観点からアドバイスをいただいており、とても助かっています。
星様:複雑な環境構成を理解した上で、テスト方法を一緒に考えていただきました。アジャイル開発への移行時も、トラブルへの対処方法を相談しながらプロセス改善を進めることができました。現在では、ステージングのテストから本番環境のテストまでの流れが確立されてきており、非常に助かっています。
川合様:新しいメンバーが加わった際にはスムーズに引き継ぎを行い、実際に参画していただいた後も、能動的にアクションをしてくれています。AGEST内でしっかりと情報共有されており、個人のスキルだけでなくチームとしての対応力の高さを感じました。今までも数多くのベンダーさんとお仕事をさせていただきましたが、個人スキルの高さだけでなくメンバー入れ替えの多いITプロジェクトにおいてチーム対応力まで高い会社はそこまで多くなかったように感じています。
藤居様:テストそのものは非常に重要な工程ですが、リソースが限られているなかで、どうしても十分な時間や人員を割けなかったり、スケジュールの最後にしわ寄せがきたりすることがあります。我々の体制においても、放送局発のサービスとして、社内外から放送事業と同様のクオリティが求められ、そのプレッシャーの中で進めていました。内部リソースだけでは対応が難しい状況で、AGESTに綿密にサポートいただいたおかげで、問題なくローンチすることができました。
さらに、その後はテスト業務に留まらず、アジャイル開発におけるテスト設計/導入支援や自動テストによるテスト効率化、プロジェクト管理に至るまで、広範な領域でAGESTにご支援いただいています。特に、抽象度の高い依頼に対しても柔軟に対応していただける点が非常に助かっています。テストを起点に、我々のプロジェクトチーム全体の戦力として大きな役割を果たしていただいており、プロジェクトの成功に貢献していただきました。
真の伴走パートナーとして、これからも多方面での支援をしてもらいたい
今後の事業展開と、AGESTとの関わり方について教えてください。
川合様:今後は「TBS ID」を活用して、TBSグループのサービスを利用しているお客様のデータを分析し、マーケティング施策に活かしていく予定です。さらに「TBS ID」を基盤とした新規事業の展開も視野に入れています。例えば、各サービスの連携を増やし、サービス間の相互送客などを実現したいですね。最終的には「TBS ID」の保有しているデータ価値を高め、自社広告枠への活用や新規事業を展開できるようになることを目指しています。
市川様:引き続き、AGESTにはプロジェクトの伴走支援をお願いしたいと考えています。今後、新しい機能開発やシステム連携が増えていくなかで、AGESTの柔軟な対応力と専門性を活かして、プロジェクトを一緒に盛り上げていただきたいです。テスト業務や品質管理だけでなく、今後の方向性についても一緒に考えていける真の伴走パートナーとして、今後も多方面でサポートしてほしいと考えています。