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ソフトウェアテスト

テスト仕様書とは?目的や作成方法、記載すべき項目を解説

ソフトウェア開発において、円滑なテスト実施のために作成される「テスト仕様書」。

品質向上や効率的な開発に不可欠なドキュメントですが、一方で具体的な作成方法がわからないという開発担当者は少なくありません。

本記事では、テスト仕様書の目的や記載すべき項目、作成手順および作成上の注意点などについて解説します。

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テスト仕様書とは?基本的な定義と作成の目的

まずは、テスト仕様書の定義と作成の目的について理解を深めていきましょう。

テスト仕様書の定義

テスト仕様書とは、ソフトウェアのテストを実施するために必要な情報を整理・記載した文書を指します。

テスト仕様書には、主に以下の内容が含まれます。

  • テスト対象と範囲(どの機能やシステムをテストするのか)
  • テスト環境と前提条件(使用するハードウェアやOS、テストデータの条件)
  • テスト手順と実施条件(どのようにテストを進めるのか)
  • 期待結果と合格基準(どの結果をもって合格とするのか)

このように、開発チームやテストチーム間での共通認識を持つための情報を網羅したドキュメントがテスト仕様書です。

テスト仕様書の目的と重要性

テスト仕様書を作成する目的としては、主に次の3つが挙げられます。

製品の品質向上

明確なテスト手順と合格基準を設定することで属人化を防ぎ、誰がテストを実施しても一貫した品質を確保できます。テスト仕様書がない、あるいは内容が不十分だと、担当者によってテスト方法や評価基準にばらつきが生じ、不具合が見逃されたり、テスト結果の信頼性が低下したりする可能性があります。

テストの効率化と網羅性の確保

仕様書にテストすべき内容を体系的に整理することで、重要な機能のテスト漏れを防ぎます。また、明確なテスト手順があることで、テスト担当者は迷うことなく作業を進められ、テスト全体の効率が向上します。

プロジェクト全体の可視化とコミュニケーションの円滑化

テスト仕様書は、プロジェクトメンバー全員がソフトウェアの期待動作について共通認識を持つためのドキュメントとして機能します。開発者、テスト担当者、プロジェクト管理者など、異なる役割のメンバー間でのコミュニケーションを円滑にし、認識の相違から生じる問題を未然に防ぎます。

実務での活用シーン

実務でテスト仕様書が活用されるシーンとしては、主に以下の3つが挙げられます。

プロジェクト管理

開発プロジェクトを管理をするうえで、テスト仕様書は進捗管理や工数見積もりの基礎資料として活用されます。何をテストするのか、どの程度の作業が必要かが明確になることで、プロジェクト全体のスケジュール管理や人員配置の最適化が可能になります。仕様変更や機能追加が発生した際も、テスト範囲の見直しや影響範囲の特定が容易になります。

品質管理

開発者とテスト担当者(QAエンジニア)が異なる場合、テスト仕様書は両者の認識を合わせる橋渡し役となります。誰が見てもわかる形で期待動作と確認方法を記載することで、テスト担当者は開発者の意図を正確に理解し、適切なテストを実施できます。これにより、テストの網羅性が高まり、リリースされる製品やサービスの品質向上につなげられます。

継続的改善とナレッジ管理

テスト仕様書と実施結果を体系的に管理することで、過去のテストデータを将来のプロジェクトに活用できます。発見された不具合のパターンや効果的なテスト手法などの知見を蓄積すれば、品質保証プロセスの継続的な改善や、同様の機能や技術を使用する複数のプロジェクト進行時に効果を発揮します。

テスト仕様書に記載すべき項目

ここからは、テスト仕様書に記載すべき項目について解説していきます。

 テスト対象と範囲 

テスト対象と範囲の明確化は、テストの品質を左右する重要な要素です。 

対象とするシステムはもちろん、バージョンや環境(本番、開発環境、検証環境など)も明確にしておく必要があります。

また、テストに含めるスコープを具体的に定めることも重要です。例えば、ECサイトの開発で「決済機能」をテストする場合には、「どの支払い方法(クレジットカード払い、コンビニ払い、銀行振込など)を対象とするか」「どのブラウザ、デバイスで確認するか」など数多くの機能のうちどれを確認対象とするのかを具体化するとよいでしょう。このように、詳細対象と範囲を仕様書に明記しておくことで、漏れなくテスト実施が可能となります。

テスト環境と前提条件 

テスト仕様書を作成する際は、テストをおこなう際の環境や前提条件も明確に示しておく必要があります。本番環境でテストを実施するべきところでステージング環境でのみ実施されてしまうなどの齟齬が生じると、合否判定を誤るリスクは高まります。

テストの実施環境のほかに明記すべき前提条件としては、使用するOSやブラウザ、  ハードウェア要件などが挙げられます。このような条件を仕様書に明記しておくことで、チーム内でのミスコミュニケーションを防ぎ、一貫性のあるテストの実施に役立ちます。

テスト手順と実施条件 

チーム内の誰が担当しても正しい結果が得られるようにするためには、詳細な手順の記載が欠かせません。 

操作方法に加えて、ログやテスト結果のエビデンスの残し方などについても統一のルールを記載することで、テスト結果をチーム内で正確に共有できるようになります。

また、「テスト時にネットワーク接続が必要か」や「事前にアカウント登録が必要か」など、実施にあたっての注意点も記載しておくことも大切です。

期待結果と合格基準 

テストの結果、どのような結果が得られることを想定しているのか(期待結果)、どのような条件を満たせばテストに合格したと判断できるのか(合格基準)を明確にしておくことも、テスト仕様書の品質向上に欠かせないポイントです。

この時、正常系(正しく動作したときの状態)と異常系(エラーメッセージなど)、両方を明記しておくことが肝心です。これにより、テスト担当者は判断基準を明確に理解し、適切な評価をすることができます。

テスト仕様書の書き方と作成手順 

ここからは、テスト仕様書の作成手順と品質を確保するためのポイントについて解説します。

テスト仕様書作成の流れ

テスト仕様書は、以下の3つのステップに沿って作成します。

 1. テスト計画を立てる 

要件定義段階で定めた品質目標に従い、テスト計画を作成します。

どのフェーズ(単体テスト、結合テスト、システムテスト)で仕様書を作成するのかを決めたうえで、テスト対象・スコープを整理し、仕様書の構成を決定します。

2. 必要な項目を整理し、ドキュメントに落とし込む 

前述の記載すべき項目を整理し、ドキュメントに落とし込んでいきます。

チームで共通認識を持てるように、社内(少なくともプロジェクト内)でフォーマットを統一するようにしましょう。

3. レビューと修正をおこなう 

テスト仕様書を作成したら、担当者に展開する前にQA担当・開発者が内容を確認するようにします。

この時、「テスト対象が過不足なく記載されているか」「曖昧な表現がなく、誰が見ても一意に解釈できるか」「最新の仕様変更が反映されているか」などの観点からレビューをおこない、必要に応じて修正のうえ、最終版を確定させます。

テスト仕様書作成のポイントと注意点 

正確なテストを実施するためには、以下の点に留意してテスト仕様書を作成することが重要です。

 曖昧な表現を避け、具体的な記載を心がける 

テスト仕様書の記述が曖昧だと、解釈が人によって異なり、意図しない動作が見逃されるリスクがあります。 

例えば、合格基準が「適切に動作する」のような形で書かれている場合、どのような場面でどのような文言が表示されれば合格なのかが不明確となります。このような曖昧な表記を避け、「○○ボタンを押すと××画面が表示される」のように動作の条件や内容を明記することで、誰もが同じ基準でテストを実施できます。

また、エラーの報告を記載する際は、可能な限り定量的な表現を用いるようにしましょう。「たまに失敗する」ではなく、「10回中2回エラーが発生」などのように記載することで、原因の特定や対応の優先度検討がスムーズに進みます。

テストの抜け漏れを防ぐために網羅性をチェックする 

テスト仕様書を作成する際には、機能ごとのテストケースを網羅的に作成する必要があります。  正常系(期待どおり動作する場合)だけでなく、異常系(エラーが発生する場合)もカバーしましょう。

また、バグの起こりやすいデータの境界値(入力可能な数値の最小値・最大値とその周辺)でのテスト、権限の違いによる動作確認(管理者と一般ユーザーなど)、さまざまな環境下(通信が不安定な状態、端末のストレージが不足している状態など)での操作など、幅広い可能性を想定したテスト設計をおこなうことが大切です。

チーム全員が理解しやすいフォーマット・記載ルールを統一する 

テスト仕様書のフォーマットが統一されていないと、チーム内での認識のズレが発生し、テスト実施の効率が低下します。 

「入力データ」「操作手順」「期待結果」の構成を統一して表形式で整理することで、誰が見てもわかりやすい仕様書を作成できます。

例えば、「ISO/IEC/IEEE 29119」といった国際標準に準拠したフォーマットを活用すると、品質の高いテスト仕様書を効率的に作成できます。 

また、合格基準の表記方法など、記載ルールを統一することも重要です。

 仕様変更に対応しやすい管理方法を採用する 

テスト仕様書は、一度作成すれば終わりではなく、開発の進行に応じて更新する必要があります。  Gitなどを活用してバージョン管理を徹底し、変更履歴を確認しやすい状態にしておきましょう。

また、テストケースの変更が発生した際に関連する項目を更新し忘れないように、チェックリストを活用する方法も有効です。

テストアウトソースにおけるアウトプット資料例

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テスト仕様書は、ソフトウェアの品質保証と効率的なテスト実施に不可欠なドキュメントです。しっかりと作り込み、適切に管理することで、テストの品質を均一に保ちながら見落としを防ぎ、プロジェクトをスムーズに進めることができます。

AGESTでは、テスト仕様書作成のノウハウを活かした「ソフトウェアテストサービス」を提供しています。専門知識を持つテストエンジニアが適切なテスト仕様書を作成し、効率的なテスト実施と品質向上をサポート。開発チームとテストチームの円滑な連携を実現し、プロジェクト全体の生産性向上に貢献いたします。

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