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ソフトウェアテスト

アジャイル開発に合わせたテスト体制のあり方とは

アジャイル開発では、短い開発サイクルの中で品質を確保しながら素早く製品をリリースすることが求められます。しかし現実には、テストにかける時間が十分に確保できずに不具合を見逃したり、テストが遅延してリリースのボトルネックになったりする事例が少なくありません。

このような問題を解決するには、アジャイル開発の特性に合わせたテスト体制の構築が不可欠です。

本記事では、アジャイル開発特有のテスト課題を整理した上で、迅速かつ確実にテストを進めるための具体的なポイントを解説していきます。

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ウォーターフォール開発とアジャイル開発におけるテストの関わり方の違い

まずはウォーターフォール開発とアジャイル開発におけるテストの関わり方の違いを整理しながら、アジャイル開発ならではの課題を明らかにしていきましょう。 

ウォーターフォール開発では全プロセスを計画に沿って進め、開発完了後の最終フェーズでまとめてテストを実施します。一方、アジャイル開発では各イテレーション内で開発と並行してテストを進行させます。これにより、仕様変更にも柔軟に対応でき、継続的な検証を通じてプロダクトを段階的に改善できる利点があります。

アジャイル開発におけるテストの要となるのは「継続的」「早期」「臨機応変」という3つの特性です。この特性に対応するため、テスト担当者には従来のソフトウェアテストや品質管理の知識だけでなく、テストを通じたフィードバックサイクルを構築するための継続的テストや自動化に関する専門スキルが求められます。さらに、プロジェクト全体を俯瞰した最適なテスト計画の立案能力や、開発チームと密に連携しながら自発的に仕様変更や課題を把握する積極性も不可欠です。

単なるテスト実施者ではなく、プロジェクト全体の品質を意識し、状況に応じて柔軟に対応できる、いわば「QAエンジニア」としての役割が求められるのがアジャイル開発におけるテストの難しさです。

アジャイル開発におけるテストプロセスの問題

実際のアジャイル開発プロジェクトでは、以下のような問題が頻繁に発生しています。

  • コミュニケーション不足
     方向性や仕様が明文化されず、口頭のみの伝達に頼りがちになり、認識の齟齬が生じやすい
  • 開発とテストのアンバランス
     開発スピードが加速する一方で、テスト工程が追いつかない状況が発生
  • テストの属人化
    特定メンバーの経験や暗黙知に依存したテスト体制となり、知識の共有や体制拡張が困難に
  • リリース頻度とのジレンマ
    頻繁なリリースサイクルの中で十分な品質を担保することが次第に困難になる

多くの企業では、プロジェクト初期段階で「機能開発」や「市場投入」といった事業成長に直結する活動を優先する傾向があります。新規プロダクトやサービスでは、まずユーザーの反応を確かめながら価値を証明していくフェーズが重要であり、この段階で開発速度や新機能の追加に注力するのは戦略的に合理的な判断といえるでしょう。

 しかし、開発プロセスが軌道に乗り、スプリントのサイクルが回り始めると、「テストが間に合わない」「リリースはできるものの不具合が多発する」といった形でテストがボトルネックになっていることが顕在化するケースが少なくありません。  その結果、リリース頻度の向上には成功しても、十分な品質検証ができないために市場で重大な不具合が発見され、最終的には大規模な手戻りや顧客からの信頼低下につながるという悪循環に陥ってしまうのです。

アジャイル開発のテストを円滑に回すポイント

これらの課題を解決し、アジャイル開発におけるテストを円滑に進めるためには、次の3つの施策が特に有効です。

  • QA専任担当者の配置
  • 開発と並走するテスト体制の構築
  • 効果的なテスト自動化の推進

これらのポイントを軸にテストプロセスを最適化することで、プロジェクト全体の品質と効率の向上につなげられます。

QA専任担当者を配置する

現状、多くの開発チームでは開発とテストをエンジニアが兼務するケースが一般的です。
こうした兼務体制を見直し、QA専任の担当者をチームに配置すれば、テストの専門性が確保され、開発とテストのバランスをより適切に保てるようになります。

QA専任担当者には、テストに関する専門知識に加え、以下のようなスキルと姿勢が求められます。

  • 開発者と自発的かつ積極的にコミュニケーションを取り、円滑な連携を図る力
  • プロジェクト全体を俯瞰できる視野の広さ
  • 開発者が見落としがちな観点から問題や課題を指摘できる洞察力

つまり、十分な経験を持ち、テストプロセスがプロジェクト全体に与える影響を深く理解した人材を専任として配置することが成功の鍵となるのです。

開発と並走するテスト体制を構築する

スピード感と品質確保を両立させるには、QA担当者が開発チームの一員として参画し、開発とテストが伴走しながら進む「並走型」の体制が重要です。この体制により、QA担当者は開発の進捗状況をリアルタイムで把握し、テスト範囲を状況に応じて柔軟に調整できます。

例えば、ECサイト開発で次のような状況を考えてみましょう。

  • 商品検索機能(完全に独立した機能)
  • 注文処理機能(開発完了)
  • 決済処理機能(まだ開発中)

注文処理と決済処理は相互に影響しますが、商品検索は独立しています。このような状況で、QA担当者は「商品検索機能は独立したテストが可能」「注文処理は単体ではテスト可能だが決済との連携部分は注意が必要」と判断し、テストの優先順位や範囲を最適化します。

この例のように、QA担当者には開発内容を正確に理解し、プロジェクト全体を見渡しながら影響範囲を把握するスキルが求められます。この「テストマネジメント」の役割をQA担当者が担うことで、限られたリソースを最大限に活用した効率的なテスト実施が可能になるのです。

また、開発と並走するテスト体制のもう1つの大きな利点は、開発者とQA担当者が異なる視点からリスクを評価できることです。開発者が機能実装に注力するなかで見落としがちな点も、テストの専門家である QA担当者なら別の角度から発見できるため、より客観的で網羅性の高い品質保証を実現できます。

テスト自動化を進める

アジャイル開発においてテストボリュームが増大するなか、効率的かつ確実にテストを実施するアプローチとして、テスト自動化の推進も効果的です。特に、繰り返し実行する必要があるテストを自動化することで、人的ミスの軽減や工数削減が実現でき、貴重な開発リソースを本来の価値創造業務に集中させることができるようになります。

ただし、効果的なテスト自動化を実現するには、適切なツール選定やスクリプト 作成のノウハウが必要です。そのため、自動化体制を設計・構築できる専門スキルと経験を持った専任のQA担当者の存在が不可欠となります。自動化すべき対象を的確に判断し、実装できる人材がいなければ、効果的な自動化を達成するのは困難となります。

テストの外注化も視野に

理想的なQA体制を自社のみで構築しようとする企業は少なくありません。しかし、多くの企業が人材確保から育成まで、さまざまな障壁に直面しています。このような状況において、テスト業務の外注化は有効な選択肢となります。

QA人材採用の難しさ

高度なスキルを持つQA担当者ほど、対応できる課題の幅が広がり、より効果的なテスト体制を迅速に構築できます。

しかし現実には、アジャイル開発に精通したQA人材の採用や教育は、多くの企業にとって容易ではありません。特に、経験豊富な人材の獲得には相応のコスト投資が必要となり、また短期間での社内育成にも限界があります。さらに、QAの専門性を正確に評価するには採用担当者自身にも一定の専門知識が求められ、この点も多くの企業にとって大きな課題となっています。

このように、自社ですべてを完結させようとすると、コストや時間、人的リソースの面で大きな負担が生じます。結果として、適切なQA人材を確保できないまま不十分なテスト体制でリリースを迎えるケースも少なくありません。こうしたリスクを回避するための現実的な解決策としては、テスト業務の一部または全体を外部パートナーに委託するのも1つの手です。

テスト外注化のメリット

テスト業務を専門企業に外注することにより、即戦力となる熟練したQA人材を専任担当者としてプロジェクトに迅速に配置できます。外注先が長年にわたり蓄積してきた豊富なノウハウやベストプラクティスを活用することで、自社だけでは実現困難な効率的かつ高品質なテストプロセスを短期間で確立できるのです。

さらに、プロジェクトの状況に応じてテストリソースを柔軟に調整できる点も外注の大きなメリットの1つです。例えば、開発規模の拡大時やリリース直前の繁忙期にはリソースを増強し、逆に業務量が減少した際には適切に縮小することも可能です。このような機動的なリソース調整は、正社員や個人の業務委託メンバーだけでは実現が難しい大きなアドバンテージといえるでしょう。

アジャイル開発に適したテスト体制を構築するために

アジャイル開発において、品質とスピードを両立するためには適切なテスト体制の構築が不可欠です。しかし、開発速度にテストが追いつかない、人的リソースが限られている、十分なノウハウが蓄積されていないなど、多くの組織がさまざまな問題を抱えており、理想的な体制整備は決して容易ではありません。

自社内でQA専任担当者を確保することが難しい場合、外部の専門サービスを戦略的に活用するのも1つの選択肢です。

AGESTの『DevOps/アジャイルテスト支援サービス』では、プロジェクトの状況やプロダクトの特性に応じて、最適なテスト手法を選定し、不具合の継続的な傾向分析とテストアプローチの評価を実施。分析・評価結果をもとにスプリントを回しながら改善を繰り返し、アジャイル開発に適したQA体制の構築を支援します。

また、テストの自動化や並走型のQAプロセス構築にも対応しており、アジャイル開発のスピード感を損なわずに品質を向上させることが可能です。

詳しくはサービス詳細ページをご覧ください。

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