リスクを把握するサイバーセキュリティ診断と綿密なフィールドテストで、スタートアップの挑戦を支援。プロならではの知見で製品の安全性・品質向上に貢献

株式会社Ashirase

システム開発

業種 卸売・小売

従業員数500名未満

利用サービス フィールドテストサイバーセキュリティ診断

取締役CTO 田中裕介様
VP of Engineering 秋本敏樹様

株式会社Ashirase

  • スタートアップの企業にも依頼しやすいコスト感とテスト内容での提案をもらえた
  • 専門エンジニアとの綿密な連係による設計~計画~実施の過程で得られた、新たなテスト観点や開発知見
  • 安全かつ品質の高い製品を生み出すために、信頼できる第三者の視点を取り入れることがとても重要

自動車、バイクの大手メーカーとして知られる本田技研工業から、2021年にスピンアウトして誕生したAshirase様。視覚障がい者の歩行をナビゲーションする製品「あしらせ」を開発し、2023年から販売をスタートされました。製品リリースに先駆け、当社にサイバーセキュリティ診断とフィールドテストをご依頼いただきました。今回は取締役CTOの田中裕介様、VP of Engineeringの秋本敏樹様に、ご依頼いただいた経緯やご依頼内容、今後の展望などについてお聞きしました。

”振動”で視覚障がい者の安全な歩行をサポート

はじめに、貴社の設立経緯について教えてください。

田中様:私たちAshiraseは、本田技研工業(ホンダ)の新事業創出プログラムの第一弾として、2021年4月に創業しました。代表の千野、取締役CDOの徳田はホンダの社員で、私は別会社からホンダに参加していました。2017年頃に千野を中心にメンバーが集まり、業務終了後に製品開発に取り組む”放課後プロジェクト”的に、「あしらせ」の開発を進めてきました。

2019年末に経済産業省主催のビジネスコンテストで優勝。その時いただいた賞金で開発を加速させました。

その後「あしらせ」はクラウドファンディングを経て、2023年から先行販売を開始し、今に至ります。

「あしらせ」とは、具体的にどのような製品なのでしょうか?

田中様:視覚障がい者の歩行を支援するナビゲーションシステムです。靴に装着する小型の振動インターフェースデバイスと専用アプリが連動し、デバイスの振動によって目的地までナビゲートすることができます。

使い方としては、まずアプリを立ち上げ音声か画面入力で目的地を設定。

直進時はデバイスが足の甲を一定間隔で振動させ、右左折ポイントに差し掛かる前には足全体を激しく振動させ、一時停止してもらうことを伝えます。その後右折の場合は足の右側が、左折の場合は左側が連続して振動する、といったように、安全な歩行をサポートしていきます。

一般的な地図アプリ、ナビゲーションアプリには音声ガイド機能が搭載されていることが多いかと思います。なぜ振動によるナビゲーションに着目されたのでしょうか?

田中様:視覚障がい者の方にとって聴覚は危険を敏感に感知する上で重要です。音声ガイドを頼りにしてしまうと、この点が困難になってしまう。危険が無いか周囲の音にも注意しているため、音声で「10m先を右折」と言われても聞き逃してしまう可能性があり、視覚障がい者の方には把握が難しい場合があります。

この問題を「あしらせ」では振動を使って直進、一時停止、右左折などの情報を分かりやすく伝えています。

また通常のアプリではナビゲーションが開始されたとき、まずどっちに進めばいいか、視覚障がい者の方には分かりにくいはずです。「あしらせ」の振動インターフェースデバイスには、方位磁石のような役割を果たす地磁気センサーが内蔵されており、デバイスを靴に取り付ける位置も決まっているので、利用者が現在向いている方角を正確に把握し、最初の一歩から正しくナビゲーションすることができます。

専門エンジニアによる詳細な計画・実施・アウトプットと、その過程で得られた新たな気づき

当社にテストのご相談をいただいたのは、2021年12月頃。どのような経緯でご相談いただいたのでしょうか?

秋本様:当時は、クラウドファンディングで先行販売することが確定していた時期でした。

「あしらせ」でお預かりする情報は、ユーザー様の位置情報、さらに障がいに関する症状など、一般的なサービスと比べても機密性が高いものばかりです。情報を安全に管理する上で、外部の専門企業にサイバーセキュリティ診断をしていただくのは、製品をリリースする上で欠かすことはできませんでした。

田中様:打ち合わせをしていく中で、サイバーセキュリティ診断だけではなく、製品のフィールドテストもご依頼させていただきました。元々様々な利用シーンでのデータを幅広く収集したいと考えており、外部の会社にテストを依頼しよう、と考えていたからです。AGESTさんが実はフィールドテストにもご対応いただけると知り、ご依頼させていただくことにしました。

最終的に当社にご依頼いただいた決め手は何でしょうか?

秋本様:今回診断いただきたかったのはAPIの部分で、内容としては小規模な診断でした。実績ある大手の診断会社にご依頼すると、診断範囲が小さくてもどうしてもそれなりの金額になってしまう。またスケジュールもタイトだったので、「テストエンジニアの予定が埋まっているので対応できない」と断られてしまう会社もありました。

AGESTさんはタイトなスケジュールにも応えてくれ、さらに数多くの実績のある企業でありながら、私たちのようなスタートアップでもご依頼しやすい価格感とテスト内容でご提示いただけました。

フィールドテストの内容はどのように決めていきましたか?

田中様:私たちの中で「このような動作をした際のデータを収集したい」という要望はある程度整理できていたので、テストの詳細な要件をAGESTさんと一緒に練り上げる、という形で進めました。具体的には歩行する、スキップする、段差を乗り越える、さらには自転車に乗るなど、ユーザーが利用中に取り得る様々な動作をテストしました。

例えば階段を登るテストでは、何段の階段で、踊り場はどのくらいのスペースで、テスト中の様子を動画に撮って…など要件を詳細に詰めていく形です。内容のすり合わせ時にAGESTさんのエンジニアの方に同席いただいていたので、想定していた以上に、かなりスムーズに進めることができました。

診断、テストを終えてみて、率直な感想をお聞かせください。

秋本様:ありがたいことに大きな問題は見つからなかったので、安心できました。診断レポートでは各項目についてOK・NGが並んでいる、といった簡素なものではなく、どのような診断をしてどのような結果が得られたのかが詳細に説明されていて納得感がある内容になっていました。

またプロの方に見ていただいて、自分たちにはない新しい観点を得られたなと。セキュリティ面で気をつけるべきことは日々変化していくものだと思っているので、今後開発をしていく上で参考になりました。

田中様:フィールドテストは2回に分けて実施していただきました。1回目のテストで内容、価格感的にも申し分ないと判断し、元々予定していたその他のテストについても追加でご依頼させていただきました。そのくらい、テスト品質には満足しています。

特に良かった点としては、動作の検知を靴に装着しているデバイス側でやるべきか、アプリ側でやるべきかを判断する知見を得られたことですね。

例えば階段を登っているときに、ジャイロセンサー・加速度センサーが搭載されているデバイス側で動作を検知することも、スマートフォンの揺れを元にアプリ側で検知することもできます。どちらで動作を検知するのか、あるいはデバイス・アプリ両方で検知するべきかは開発する上で重要な判断軸になってきます。

様々な動作に対してこういった判断をするには膨大な動作データが必要になりますが、自分たちだけでデータを集めるのは困難です。またテストの知見も豊富にあるわけではないので、見落としがある可能性もあります。

AGESTさんに依頼したことで見落としなどの心配もなく、短期間で様々なデータを得られたのは製品をより品質向上させていく上でとても助かりました。また動画や写真を添えてテスト中の様子を詳細にレポートいただけたので、正確にデータを分析することができました。

少人数の会社にこそ、信頼できる第三者の視点が必要

今回の診断、テストを通じて当社を評価いただいている点はありますか?

秋本様:かなりタイトなスケジュールでご依頼することになったのですが、柔軟かつスピーディーにご対応いただけたのは、とても助かりました。実は他の診断会社には、「そのスケジュール感では対応は難しい」とご相談時に断られたところもありました。製品の先行販売時期が決まっていたこともあって、厳しいスケジュールの要望に応えてくれたのは本当に頼もしかったです。

田中様:外部に依頼する場合はがっちり要件を決めないと上手くいかない、というのがこれまでの私の認識でしたが、今回、それが覆りました。先程お話した通りテストの要件が詳細に決まっていない状況にも関わらず、一緒に時間を掛けて要件を考え、要望通りの期限でテストを実施いただけました。積極的に私たちの要望に合わせてくれる姿勢は、とても助かったポイントです。

「あしらせ」の今後の展望を教えてください。

田中様:今後は日本だけではなく、アメリカ、ヨーロッパなどより大きな市場に向けて拡大を目指していきます。

それに合わせて、現在はバージョン2の開発も進めています。今後、機能や取得するデータを増やしていくほど、守るべき情報も増えていくでしょう。引き続きAGESTさんにもご協力いただきたいですね。

最後に貴社と同じように、診断やテストに課題を感じているスタートアップ企業にメッセージがあればお願いします。

秋本様:スタートアップ企業など社員数が少ない会社では、一人が担当する業務領域が自然と広くなってくると思います。しかしセキュリティ上の安全性などを考えると、どうしても一人の”一人称視点”では、ヌケもモレも生じてしまう。

安全かつ品質の高い製品を生み出すために、信頼できる第三者の視点を取り入れることがとても重要だと思っています。

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