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「Claude Mythos」が変えたサイバーセキュリティ。AGESTが取り組む、データ主権を確保する自律型AIセキュリティ「AGEST ZERO SHIELD」 (1/3)

AIの進化により、サイバー攻撃は劇的な高度化と高速化を遂げました。脆弱性の公表から数時間で攻撃コードが生成されるようになり、社内感染が拡大するまでの時間は最短27秒まで短縮されています。

近年、国内の大手企業などでもランサムウェア等による大規模なシステム停止や情報漏えいが相次いでおり、「うちの会社は関係ない」という考えはもはや通用しません。サイバー攻撃は今や、企業の事業継続を根底から揺るがす極めて深刻な経営リスクとなっています。

このような未曾有の脅威に対抗すべく、株式会社AGEST(以下、AGEST)が新たに打ち出したのが、自律型AIサイバーセキュリティプラットフォーム「AGEST ZERO SHIELD」です。

なぜ今、AIによる防御が不可欠なのか。次世代のサイバー防衛策と、私たちが危惧する「日本企業が直面するデータ主権の危機」についてお話しします。

なぜ品質保証の会社が、高度AIセキュリティ領域に踏み込むのか

AGESTは、2026年9月に自律型AIによる包括的サイバーセキュリティプラットフォーム「AGEST ZERO SHIELD」を商用リリースしました。AIを用いたサイバー攻撃が急速に高度化するなか、企業に新たな防衛手段を提供するための取り組みです。

私はこのプロジェクトで技術戦略を統括しています。CTOとして技術全般を管掌しており、近年は特にサイバーセキュリティ分野に力を入れ、「AGEST ZERO SHIELD」には企画構想段階から携わってきました。

品質保証を強みとするAGESTがこの領域へ踏み込んだ背景には、サイバー攻撃の環境を一変させた、あるフロンティアAIの登場があります。

フロンティアAIの登場で激変したサイバーセキュリティを取り巻く環境

取締役 専務執行役員 CTO 関 守
取締役 専務執行役員 CTO 関 守

事業立ち上げの決定的な転換点は2026年4月、米Anthropic(アンソロピック)社が高度な推論能力を備えたフロンティアAIモデル「Claude Mythos Preview(以下、「Mythos」)」を発表したことです。

Mythosはセキュリティ用途に特化して開発されたモデルではありません。しかし、その圧倒的な推論能力と膨大な学習データゆえに、ソフトウェアの脆弱性を発見する能力が突出して高いことが明らかになりました。攻撃力があまりに高いことから一般公開は見送られ、ごく限られた企業・機関のみが防御目的での検証に関わることを許されました。

なぜここまでの能力を獲得できたのか。その背景には、世界中の開発者がAIを使ってプログラムを書くようになったことがあります。AI自身が「人間がどこで間違えるか」「どんなミスをしがちか」を大量に学習していきました。その積み重ねが、高度な推論能力と結びついた結果として、脆弱性を見抜く圧倒的な能力を獲得してしまったのです。

AIが自律的にコードを書き、システムの弱点を暴き出す時代において、防御側が人間の速度で判断していてはもはや追いつけません。この危機に対応するため、私たちが技術基盤の共同開発相手として選んだのが、米Lazarus(ラザラス)社です。

Lazarus社との関係は今回が初めてではありません。すでに5年前から画像解析や文書理解の分野で接点があり、米国防総省向けのAI開発実績を持つ同社とは、AIエージェントによるセキュリティ監視の共同開発についても、Mythos登場以前からすでに構想・協議を進めていました。

フロンティアAIの登場という劇的な環境変化は、この積み重ねてきた協業を、新たな事業へと結実させる転換点となったのです。

「AGEST ZERO SHIELD」という名称に込めた想い

「AGEST ZERO SHIELD」という名称についてですが、発想の出発点は、各企業や団体を守るための防衛的な総合プラットフォームにしたいというものでした。そこに「ゼロ」というキーワードを重ねています。

被害を限りなくゼロに近づける盾(シールド)でありたいという意味に加え、「ゼロデイ」、つまりまだ誰も知らない未知の脅威をいち早く見つけ出すという私たちの目的も重ね合わせています。

攻撃側に先んじて、まだ誰にも知られていない脅威を見つけ出し、それに見合う盾を私たち防御側が構築する。そんな想いを、この名称に込めました。従来のセキュリティツールは見つけるだけの役割でしたが、「AGEST ZERO SHIELD」では見つけて、直して、直ったかを自律的に確認するところまでを一貫して担いたいと考えています。

データ主権を守り、コストの壁を越える

「AGEST ZERO SHIELD」が最も重視しているテーマの一つが、日本企業における「データ主権」の確保です。このプラットフォームは、API経由でクラウドにデータを送信しないオンプレミスでの設置を前提としています。それはフロンティアAIなどを利用する際のように、海外企業へソースコードを送信する必要がないことを意味しています。(※オンプレミスプランの場合)

機密データ流出リスクとデータ主権の確保の比較

強力なAIにソースコードを読み込ませることは、企業にとって大きなリスクをはらみます。国内の重要インフラ事業者や金融機関の巨大なシステムの根幹が、国外の企業に渡って本当に適切に扱われるのか、私には確信が持てません。「自社モデルの学習には使用しません」とAI企業側が明言していても、それを外部の人間が検証し、完全に保証する術はないのです。

さらに、フロンティアAIへのアクセス権は、国際的な政治力学の影響を色濃く受けます。海外の要人によるアクセス権の言及や、政権の制裁措置によって利用環境が突如制限される可能性も否めません。生命線とも言えるセキュリティ対策の命運を、他国の政治判断に委ねてしまうリスクはあまりにも大きいと感じています。

このような一連の流れの中で、私たちは「果たして自社にデータ主権が存在しているのか」という根本的な問題に直面しています。自分たちの重要なデータを自らコントロールできない状態は、極めて不健全だと感じています。今の状況は、政治の動向に大きく左右されてしまっている感があります。

AGESTはこの状況への一つの対抗軸として、システムを完全に自社環境に閉じ込める手法をとりました。一切外部と通信せずに安全を担保し、かつAIによる同様の結論が得られるのであれば、それに勝るソリューションはないと考えています。

データ主権の確保と並んで、「AGEST ZERO SHIELD」が向き合ったもう一つの課題がコストです。

一般的なクラウドAIツールや従来のセキュリティ診断を継続的に利用すると、従量課金によるコストの爆発的な増加が企業にとって大きな重荷となります。これに対し「AGEST ZERO SHIELD」は、トークンベースではない年間ライセンス固定課金方式を採用しています。

年間ライセンス固定課金方式

データ主権を脅威から守り抜き、かつコストの増大を気にせずフルスキャンによる防御を可能にする。これが、「AGEST ZERO SHIELD」が日本企業にとって現実的な選択肢となりうる理由だと考えています。

日本発のセキュリティ製品が、育つべき理由とは

国産サイバーセキュリティ製品による健全な競争を促し、日本企業のデータ主権を守るという取り組みは、単なる一企業の利益追求にとどまりません。

私は最新のフロンティアAIを用いたクラウドでの防御を否定しているわけではありません。しかし、機密性の高いシステムなど、ソースコードを絶対に外部へ出せない領域は確実に存在します。そうした状況下で、自社でデータを守るための選択肢が存在しない現状に危機感を抱いているのです。

その事実自体が不公正だと言わざるを得ません。データを外部に出さない世界での競争が生まれ、私たちも切磋琢磨することで性能を上げていく。それが日本のサイバーセキュリティ市場の健全な発展に必要だと考えています。

さらに、インターネットの健全な発展のため、オープンソースコミュニティへの貢献や、東南アジアへ進出している日本のサプライチェーンを防御するための国際的な展開など、将来的な構想も視野に入れています。

グループ全体のビジョン「Save the Digital World」

圧倒的な攻撃力を手にしたAIに対し、同じくAIという盾を用いてデジタル社会を防衛する。この取り組みは、AGESTが属するデジタルハーツグループ全体のビジョン「Save the Digital World」にも通じていると考えています。

リアルとネットが融合した現代において、インフラの停止は社会の機能を直接的に麻痺させます。だからこそ、システムが正しく動くことを保証する「テスト」と、外部からの攻撃で止まらない「セキュリティ」は、デジタル社会を守るための不可欠な両輪だと思うのです。

私たちのこの新事業は、まさにそのグループ全体の想いを具現化するものだと考えています。今回の「AGEST ZERO SHIELD」の開発には、国産サイバーセキュリティの一翼を担いたいという想いを込めています。AIの進化が引き起こした未曾有のサイバー危機に、私たちは自らの手でつくる「盾」で立ち向かいます。

次回は「AGEST ZERO SHIELD」がどのような技術によって支えられているのか、そしてLazarus社との協業の詳細についてお話しします。



2026/09/28

  • 杵島 直樹

    Kijima Naoki

    特定助教

    デジタル教材自動生成、パーソナライズ学習支援、生成AI応用

  • Rafael Gonzalez

    Rafael Gonzalez

    客員研究員

    機械学習、人工知能、適応型学習システム

  • Lisa Han

    Lisa Han

    客員研究員

    クロスカルチュラル教育、教育社会学、比較教育学

  • 佐伯 美咲

    Saeki Misaki

    博士課程3年

    教育心理学、認知負荷理論、学習動機付け

  • 鷹見 陽大

    Takami Haruto

    博士課程2年

    教育データマイニング、ラーニングアナリティクス、行動分析

  • 小林 颯

    Kobayashi Hayate

    博士課程1年

    教育用VR/AR、没入型学習環境、メディア教育

  • 中村 翔太

    Nakamura Shota

    修士課程2年

    ゲーミフィケーション、教育アプリ開発、ユーザー行動分析

  • 結城 るか

    Yuuki Ruka

    修士課程2年

    HCI、UXデザイン、感情応答インタフェース

  • 加藤 玲奈

    Kato Reina

    修士課程1年

    学習分析、データビジュアライゼーション、教育評価

  • 松田 真紀

    Matsuda Maki

    研究室秘書

    研究支援、イベント運営、広報サポート

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